ロシア自動販売機の歴史と進化ストーリー 【後編】

2025-09-03

前編では、モスクワの街角で出会ったユニークな自動販売機をご紹介しました。後編では、少し時間を巻き戻して、ロシアにおける自販機の歴史と進化、そして近年の日本ブームまでをまとめてみます。

帝政ロシアに現れた「チョコレート自販機」

実はその歴史は意外と古く、帝政時代の1898年にサンクトペテルブルクの「ジョルジュ・ボーマン(Жорж Борман)」菓子店が、サンクトペテルブルクのネフスキー大通り(Невский проспект)とナジェジンスカヤ通り(Надеждинская улица)の角に、ロシア初のチョコレート自販機を設置しました。現地の新聞『Петербургский листок』にも掲載され、通行人の注目を集め、大きな話題になったそうです。

ソ連時代に花開いた「Автоматторг」時代

1950年代〜1960年代には、ソ連で自販機が一気に普及しました。1960年に設立された国営の「Автоматторг(アフトマトトルグ)」は、自販機による販売を一手に担い、炭酸水やコーヒー、サンドイッチ、ビール、タバコ、雑誌など、多彩な商品を扱っていました。モスクワ市内だけで数千台規模まで広がり、ソ連市民の生活に溶け込んでいきました。

夏の風物詩だった炭酸水マシン

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特に象徴的だったのが炭酸水(газированная вода)自販機。初期モデルは赤を基調として丸みのあるデザインと大きなロゴが特徴。コイン投入口とレバー、そして共用のガラスコップがセットされたスタイルだったそうです。共用グラスを洗浄して使い回すという仕組みは今ではちょっと考えられないですが、当時は当たり前で、多くの人に愛されました。

1970年代に入ると、炭酸水マシンは大量生産されるようになり、自動的にシロップを混ぜるタイプなど進化していきました。「1コペイカで炭酸水」「2コペイカでシロップ入り」という安さで、当時の夏の風物詩として人々に親しまれていました。

今でも一部の街角には復刻版が設置され、「レトロ可愛い」スポットとして観光客に人気です。

幻の香りの自販機!?

そんな自販機ブームの中でも、ひときわ異彩を放っていたのが香水自販機(одеколономат)。1950年代に西側のアイディアを参考に導入されたもので、1回の使用料は当時15コペイカで、スイッチを押すと木製のボックスから香水が噴き出す仕組みでした。 理髪店やホテル、VDNKH(全ロシア博覧センター)、ギフトショップなどにも設置されましたが、機械の故障や維持コストの高さから数は限られ、1980年代までにほぼ姿を消してしまった幻の自販機です。

△当時人気のあった香水専門店「Новая Заря(ノーヴァヤ・ザリャ)」の「Красная Москва(クラースナヤ・モスクワ)」だったそうで、1864年からのお店の看板商品として、現在も人気があります。写真はアルバート通り店にて。ロシア正教の教会屋根のような赤い香水瓶キャップが可愛いですね。

未来を先取りした無人販売店「Прогресс」

さらに1962年、モスクワ中心部チェーホフ通り3番地に開店したのが「プログレス(Прогресс)」という名の、ソ連初の完全自動化無人販売店でした。店内の壁一面にずらりと並ぶ自販機から、乳製品やジュース、缶詰、パンなど約60種類の食品を購入できる仕組みは、まるで未来を先取りしたようなショッピング体験。

ただし、商品補充や故障対応の課題も多く、70年代半ばには惜しまれつつも閉店してしまったそうです。

日本から!DyDo自販機の進出

さて、ロシアの自販機ブームに日本から参入したのが、飲料メーカーのDyDo DRINCO(ダイドードリンコ)でした。

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モスクワ上陸は2013年で、当初は「日本の飲料がそのまま買える!」と話題になり、モスクワの地下歩道や空港に次々と設置されました。

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ホット飲料も貴重でしたし、梅ジュースやゼリーソーダなど日本限定の飲み物がロシアで買えるのは特別な体験でした。

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△購入後に「ありがとうござました〜!」と日本語で挨拶が流れるマシンは、礼儀を重んじるハイテクの国ならではだね、とロシア人の感想。

ロシアではすでに定番!フレッシュジュース自販機

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△一方、最近日本でも見かけるようになった自販機といえば、目の前で絞ってくれるフレッシュジュースの自動販売機。ロシアでは、レストランなどでジュースを注文すると、「フレッシュ?それとも普通の?」と確認されることも多いのですが、生搾りのジュースが人気で、2017年のモスクワ生活時もスーパーや空港などで生搾りジュースの自販機をよく利用していました。

観光地で人気!記念コインの自販機

 最近の自動販売機では、液晶画面でコインを作るもの。

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△モスクワ・シティの展望台では、記念コインを作る自動販売機。お金を入れたらまずは、コインの片面に描かれるお好みのモスクワの景色を選びます。もちろんモスクワ・シティを選択し次へ。つぎにマグネットのコイン台紙を選びます。ロシア国旗カラーの宇宙飛行士ユーリー・ガガーリン柄を選択。コインには自筆サインなどお絵描きもできました。

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△コイン完成までは、なんともぐらたたきで遊べるサービス!!ここも盛り上がります。

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△完成したのがこちら!ガガーリンの顔部分をあけて、なかに記念コインをいれます。

関連ブログ☆モスクワ通信『食べ放題!天空のアイスクリーム工場がある展望台PANORAMA360』

ロボットが活躍する最新の自販機

ロボットが作ってくれる自販機も話題になりました。

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△ザリャージエ公園では、ロボットが作ってくれるコーヒー自動販売機

関連ブログ☆【モスクワ通信】現在進行形のモスクワ観光スポット!ザリャージエ

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△ショッピングモールのなかには、おしゃべりロボットが作ってくれるアイスクリーム!アヴィアパルクの最上階、キッザニアの目の前にあるため、「こんにちは!アイスはいかが?」の声に誘われていつも子どもたちに囲まれています。

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△お金を入れると自動的にロボットアームが動きだして、カップにアイスを入れてくれます。

旅先で出会う自販機は、単なる便利な機械ではなく、その国の文化や暮らしを映す“小さなショーケース”のような存在です。

次回モスクワを訪れたら、キャビアや宇宙食から炭酸水マシンまで、ぜひ“自販機ウォッチング”を旅の楽しみのひとつに加えてみてください。そして面白い自販機を見つけたら、ぜひ教えてくださいね!

ロシアで見つけた!ユニーク自動販売機の世界 【前編】

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キャビアとイクラ、チューブ入り宇宙食、そしてレトロな炭酸飲料・・・モスクワの街を歩いていると、つい足を止めたくなる“ちょっと変わった自動販売機”に出会うことがあります。

日本では見かけないラインナップばかりで、思わず写真に収めたくなることもしばしば。

キャビア&イクラの自販機

空港や鉄道駅で見つけたのは、なんとキャビアとイクラの自販機!さすがロシア、高級食材がこんなに気軽に手に入るなんて驚きです。お土産にはもちろん、長い列車旅の車内でちょっとした贅沢を味わうこともできますね。

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△パヴェレツカヤ駅構内で

関連ブログ☆モスクワ通信『あなたはどちら?寝台特急レッド・アロー号それとも高速鉄道サプサン?』

生花・ドライフラワーの自販機

ロシアでは、記念日やお祝いごとにお花を贈る文化が根付いています。だからこそ、生花の自販機は街のあちこちで見かけます。空港や劇場、ショッピングモールなどで、急なお呼ばれのときにも大活躍!

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△ロシアの飛び地カリーニングラードの空港にて

 

△モスクワの空港にて

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△トヴェルスカヤ通りの雑貨屋さんにて

△大型スーパーの入り口ではドライフラワーの自動販売機も見かけました!

関連ブログ

春到来!ロシアのお花屋さん事情

モスクワ通信『中世ドイツ、ソ連、そしてロシア!融合の飛び地カリーニングラード』

モスクワ通信『琥珀、防空壕、マジパン!カリーニングラードでおすすめの博物館3選』

コンタクトレンズの自販機

コンタクトを使う方には、ちょっと感動モノかもしれません。私も一時帰国が延期になったとき、ロシアで見つけたコンタクトレンズの自販機に救われました。旅行中にレンズを忘れても安心です。

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△最寄りスーパーの入り口にあるこちらの自販機では、日本でもお馴染みのメーカー、ワンデーアキュビュー のTRUE EYEとMOIST、OASYSを扱っていました。

△レンズの度数(PWR)とベースカーブ(BC)を選択して、カード支払い、すると・・・

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ストッキング、宇宙食、世界のチューインガム

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△地下鉄入り口近くで見かけたのは、ストッキングの自販機!サイズも豊富で、品質はやはり日本製には及びませんが、足の長いロシア人女性の体型に合わせたバリエーション。

△こちらもロシアならでは!?宇宙食の自販機です。お土産に人気で、 ザリャージエ公園で見かけました。

△チューブ入り宇宙食ボルシチ味などユニークなラインナップも。


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△子供デパートで見つけた「世界のチューインガム」自販機では、アメリカ、スペイン、カナダ、ハンガリー、デンマーク、フランス、メキシコ・・・ブロックになっていたり、チューブに入っていたり、ユニークなガムがたくさん!

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△日本代表として、『ふーせんの実』と『スーパーソーダガム』、『スーパーコーラガム』がエントリーしていました。

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△他にも100ルーブルを入れると、水槽のなかのお魚に餌をあげることが出来るWWF世界自然保護基金のプロジェクト«Море желаний»(希望の海)の自販機も素敵なアイディアですね。

他にも2018年のFIFAワールドカップロシア大会では、公式グッズ専用の自販機も登場。会場や空港で人気を集め、公式キャラクターのキーホルダーやトロフィーの置物などの記念品を購入する観光客で賑わいました。

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後半では、実は長い歴史があるロシアの自販機ストーリーと日本ブームについてもご紹介します!

関連ブログ

モスクワ通信『60周年を迎えたルビャンカの中央子どもデパート』

夏休み前は卒業シーズン⁉︎ 後編 〜学用品から読み解くロシアの学校生活〜

2025-07-23

前編ではロシアの入学&卒業シーズンについてご紹介しましたが、 学校生活のもうひとつの楽しみといえば、学用品。毎日手にする文房具などもその国の文化や価値観が表れやすいアイテムです。

ロシアで子育てをしていた私は、日本との違いにたびたび驚かされました。今回は、ロシアの「学びの道具」たちをご紹介します。

実はロシアでもランドセルが大人気!

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私がモスクワで暮らしていた2017〜2020年、日本ではお馴染みの“あるもの”がロシアで大流行していました。それがなんと…日本のランドセル!

赤や黒のランドセルが、中央子どもデパートをはじめ、百貨店「グム」のショーウィンドーを飾り、まるで日本の新学期がそのままロシアにやって来たかのよう。人気の背景には「日本の高級品」というイメージに加え、耐久性・機能性・美しさへの憧れがあるようでした。

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△ブログ前編でもご紹介したロシア人美少女モデル、アナスタシヤ・クニャゼワちゃんも、Instagram(@knyazeva_anastasiya_official)のなかで、ロシアのランドセルショップで購入したお気に入りのランドセルを紹介!またランドセルを背負ったお洒落なファッションをたくさん披露して、当時の子どもたちの注目の的に!

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△街中でも実際にランドセルを背負った学生さんとすれ違うこともありました。

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△店員さんによると、2015年頃から少しずつ見かけるようになり、2017年に人気が一気に高まったとのこと。

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△中央子どもデパートのなかのランドセル店(2022年)日本同様、定番の赤や黒だけでなく、水色やラベンダーなどカラーバリエーションも豊富です。(関連☆モスクワ通信『60周年を迎えたルビャンカの中央子どもデパート』

青いボールペンが基本です

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ロシアの文房具売り場でまず目に入るのが、青いボールペンの豊富なラインナップ。日本では公式書類には黒が一般的ですが、ロシアでは青インクが主流です。理由は、「印刷部分と直筆部分が見分けやすいからでは?」という説も。

学校でも、日本では鉛筆でノートを取り間違えたら消しゴムで消すのが普通ですが、ロシアの子どもたちは青いボールペンで書き、間違えても線で訂正。
「間違いも学びの一部だから、残すんだよ」という考えが印象的でした。

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△私のお気に入りは、グジェリ柄やホフロマ風の青ペン。文具コーナーでも青インクは目立つ存在でした。

ノートはA5サイズが定番。

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△ロシアのノートは、日本のB5より一回り小さいA5サイズが主流。△ソ連時代から変わらぬこちらのノート(2ルーブル50コペイカ)。先日訪れた『子ども時代ミュージアム』にも展示されていました。(関連☆モスクワ通信『60周年を迎えたルビャンカの中央子どもデパート』)・・・

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△中身は「横罫(в линию)」と「方眼罫(в клетку)」の2種類があります。

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△表紙には「教科・学年・クラス・学校名・名前」をロシア語でしっかり書き込む欄が。記入の仕方をロシア人のお友達に見せてもらいました。日本では固有名詞や人の名前は変化せず、“て、に、を、は”などの助詞を使って活用しますが、ロシア語では名詞そのものの末尾を変化させて活用するため、なんと人の名前まで変わってしまいます・・・!

△裏表紙にはよく筆記体の練習見本がついています。

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新学期シーズンには、カラフルなデザインのノートが並び、あれもこれも欲しくなってしまいます。表紙にはプーシキンやレフ・トルストイなどの文学者、宇宙飛行士や科学者など、子どもたちが尊敬する人物たちが描かれていることも多く、「憧れとともに学ぶ」文化が根付いているように感じます。

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△たとえば、プーシキンと学ぶ“文学“のノート

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△文学、ロシア語、歴史、化学、こんなシリーズで揃えるのも素敵ですね!

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△「外国語学習ノート」には日本の国旗も発見!語学ノートの中身は、単語・意味・用例が書ける仕様で、ロシア語学習にもピッタリでした。

ちなみに教科書の多くは伝統的に、学校から支給されたり図書館から借りたりして、先輩のお下がりを大切に使い、また学年末には次の学年のために返却していました。ここは日本でも取り入れてみたら良いかもしれませんね。

ソ連時代の定番文具も健在

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さきほどのノートも「ソ連時代からの定番」ですが、ほかにも印象的だったのが、ハリネズミの鉛筆立て。鉛筆を立てるだけでなく、定規や消しゴムを挟んだりもできる実用性と可愛らしさを兼ね備えた一品です。とっても便利で可愛らしいのに、少しずつ見かけなくなってきました。緑豊かなロシアでは、森の中などでよくハリネズミをみかけるため、ロシア人には親しまれていて、子ども向けのグッズにもイラストが描かれています。

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△こちらは、レストランで見つけた子ども向けの塗り絵のサービス

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△もうひとつの定番が、カラフルな本立て。アニメ「ミーミーミーシュキ」のキャラクター入りなど、今も子どもたちに愛されています。

学用品以外にも、ロシアの学校や学校生活には日本とは違う面白い発見が詰まっています。たとえば、ソ連時代の名残りでたくさんの学校名が番号で呼ばれていたり(例:810番学校、1239番学校のように)、登校したら学校で朝ごはんを食べることとか、挙手の仕方とか、

勉強も遊びも、子どもたちにとっては「世界を広げる冒険」。道具の形は違っても、「学ぶことの楽しさ」は万国共通。ロシアの文房具売り場には、そんな世界共通のまなざしと、ちょっとした異文化のトキメキが詰まっていました。