夏休み前は卒業シーズン⁉︎ 後編 〜学用品から読み解くロシアの学校生活〜

2025-07-23

前編ではロシアの入学&卒業シーズンについてご紹介しましたが、 学校生活のもうひとつの楽しみといえば、学用品。毎日手にする文房具などもその国の文化や価値観が表れやすいアイテムです。

ロシアで子育てをしていた私は、日本との違いにたびたび驚かされました。今回は、ロシアの「学びの道具」たちをご紹介します。

実はロシアでもランドセルが大人気!

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私がモスクワで暮らしていた2017〜2020年、日本ではお馴染みの“あるもの”がロシアで大流行していました。それがなんと…日本のランドセル!

赤や黒のランドセルが、中央子どもデパートをはじめ、百貨店「グム」のショーウィンドーを飾り、まるで日本の新学期がそのままロシアにやって来たかのよう。人気の背景には「日本の高級品」というイメージに加え、耐久性・機能性・美しさへの憧れがあるようでした。

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△ブログ前編でもご紹介したロシア人美少女モデル、アナスタシヤ・クニャゼワちゃんも、Instagram(@knyazeva_anastasiya_official)のなかで、ロシアのランドセルショップで購入したお気に入りのランドセルを紹介!またランドセルを背負ったお洒落なファッションをたくさん披露して、当時の子どもたちの注目の的に!

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△街中でも実際にランドセルを背負った学生さんとすれ違うこともありました。

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△店員さんによると、2015年頃から少しずつ見かけるようになり、2017年に人気が一気に高まったとのこと。

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△中央子どもデパートのなかのランドセル店(2022年)日本同様、定番の赤や黒だけでなく、水色やラベンダーなどカラーバリエーションも豊富です。(関連☆モスクワ通信『60周年を迎えたルビャンカの中央子どもデパート』

青いボールペンが基本です

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ロシアの文房具売り場でまず目に入るのが、青いボールペンの豊富なラインナップ。日本では公式書類には黒が一般的ですが、ロシアでは青インクが主流です。理由は、「印刷部分と直筆部分が見分けやすいからでは?」という説も。

学校でも、日本では鉛筆でノートを取り間違えたら消しゴムで消すのが普通ですが、ロシアの子どもたちは青いボールペンで書き、間違えても線で訂正。
「間違いも学びの一部だから、残すんだよ」という考えが印象的でした。

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△私のお気に入りは、グジェリ柄やホフロマ風の青ペン。文具コーナーでも青インクは目立つ存在でした。

ノートはA5サイズが定番。

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△ロシアのノートは、日本のB5より一回り小さいA5サイズが主流。△ソ連時代から変わらぬこちらのノート(2ルーブル50コペイカ)。先日訪れた『子ども時代ミュージアム』にも展示されていました。(関連☆モスクワ通信『60周年を迎えたルビャンカの中央子どもデパート』)・・・

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△中身は「横罫(в линию)」と「方眼罫(в клетку)」の2種類があります。

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△表紙には「教科・学年・クラス・学校名・名前」をロシア語でしっかり書き込む欄が。記入の仕方をロシア人のお友達に見せてもらいました。日本では固有名詞や人の名前は変化せず、“て、に、を、は”などの助詞を使って活用しますが、ロシア語では名詞そのものの末尾を変化させて活用するため、なんと人の名前まで変わってしまいます・・・!

△裏表紙にはよく筆記体の練習見本がついています。

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新学期シーズンには、カラフルなデザインのノートが並び、あれもこれも欲しくなってしまいます。表紙にはプーシキンやレフ・トルストイなどの文学者、宇宙飛行士や科学者など、子どもたちが尊敬する人物たちが描かれていることも多く、「憧れとともに学ぶ」文化が根付いているように感じます。

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△たとえば、プーシキンと学ぶ“文学“のノート

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△文学、ロシア語、歴史、化学、こんなシリーズで揃えるのも素敵ですね!

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△「外国語学習ノート」には日本の国旗も発見!語学ノートの中身は、単語・意味・用例が書ける仕様で、ロシア語学習にもピッタリでした。

ちなみに教科書の多くは伝統的に、学校から支給されたり図書館から借りたりして、先輩のお下がりを大切に使い、また学年末には次の学年のために返却していました。ここは日本でも取り入れてみたら良いかもしれませんね。

ソ連時代の定番文具も健在

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さきほどのノートも「ソ連時代からの定番」ですが、ほかにも印象的だったのが、ハリネズミの鉛筆立て。鉛筆を立てるだけでなく、定規や消しゴムを挟んだりもできる実用性と可愛らしさを兼ね備えた一品です。とっても便利で可愛らしいのに、少しずつ見かけなくなってきました。緑豊かなロシアでは、森の中などでよくハリネズミをみかけるため、ロシア人には親しまれていて、子ども向けのグッズにもイラストが描かれています。

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△こちらは、レストランで見つけた子ども向けの塗り絵のサービス

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△もうひとつの定番が、カラフルな本立て。アニメ「ミーミーミーシュキ」のキャラクター入りなど、今も子どもたちに愛されています。

学用品以外にも、ロシアの学校や学校生活には日本とは違う面白い発見が詰まっています。たとえば、ソ連時代の名残りでたくさんの学校名が番号で呼ばれていたり(例:810番学校、1239番学校のように)、登校したら学校で朝ごはんを食べることとか、挙手の仕方とか、

勉強も遊びも、子どもたちにとっては「世界を広げる冒険」。道具の形は違っても、「学ぶことの楽しさ」は万国共通。ロシアの文房具売り場には、そんな世界共通のまなざしと、ちょっとした異文化のトキメキが詰まっていました。

夏休み前は卒業シーズン!? 前編 〜9月始まりのロシア式スクールライフ〜

2025-06-23

6月、日本の子どもたちは1学期を終え、夏休みに向けて勉強と遊びの計画を立て始める季節。

一方、ロシアでは6〜7月は学校生活の一区切りの時期。欧米と同様に9月に新学期が始まるため、長い夏休みを前に、学年末、そして卒業式をむかえます。日本とは異なる年間サイクルのなかで、子どもたちは春から夏へと移っていきます。(関連 ロシアの子どもたちの音楽教育をのぞいてみよう〜ロシアの新星コンサート2024特集!

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△ロシアの四季の移り変わりや旬の食べ物を知ることが出来るスーパーマーケットの広告チェックは、生活の楽しみのひとつ!5月号にはよく、卒業式のテーブルに並ぶごちそうやパーティメニューが紹介されていました。

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入学式は「最初の鐘」、卒業式は「最後の鐘」

ロシアの入学式では、「最初の鐘」という伝統的なセレモニーがあります。

息子が通っていた学校でも、立派に成長した頼もしい最上級生が、まだ幼さの残る初々しい新入生の女の子と手を繋いで、全校生徒のまわりを1周しました。お兄さんに手を引かれながら一歩ずつ歩く姿に、見ているこちらも胸が熱くなったものでした。この「最初の鐘」は、ロシアの子どもたちにとって学びの始まりを告げる特別な瞬間です。

一方、学年末や卒業式では「最後の鐘」が鳴らされます。これは新たな人生の節目を象徴する儀式で、1年間の努力を讃え、未来へ向けたエールのようにも感じられます。

また、日本の卒業式には桜がつきものですが、ロシアでは5〜6月にライラックが満開を迎えます。卒業式の広告やパーティメニューの案内にも、香り高いライラックが描かれていて、まさにロシアらしい季節の彩りです。(関連 ライラック)

卒業パーティでは、子どもたちが先生に花束や贈り物を渡し、学びの締めくくりに感謝を伝えます。

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△こちらは同じスーパーの9月の広告です。ロシアの新学期は「勉強の秋」という雰囲気ですね。「最初の鐘」を鳴らすので、新学期を象徴するモチーフとして鐘も描かれています。

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△9月の新学期、学校の黒板にチョークで書かれていた可愛らしい絵。先生たちから「たくさんの新しい知識を得て、素晴らしい一年にしましょう!」のメッセージが添えられていました。

花束を手に、先生へ「ありがとう」を届ける日々

ロシアの学校では、大切な日に子どもたちが先生へ花束やプレゼントを贈る習慣があります。9月1日の「知識の日(День знаний)」や、10月5日の「教師の日」はその代表例。

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△9月1日は 「知識の日(День знаний)」とも呼ばれています。

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△スーパーの広告の表紙に特集された「教師の日」

子どもたちはきちんとした服を着て登校(女の子はよく、頭にふわふわの大きな白いリボンをつけます)。そして、先生へ感謝の気持ちを込めた花やプレゼントを手渡します。これは日本にはあまり見られない光景ですが、こどもたちやその保護者から先生たちへ、さらに教育への敬意を社会全体で表しているように思えます。

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△世界的に人気のロシア人子役モデル、アナスタシヤ・クニャゼワちゃんもInstagram(@knyazeva_anastasiya_official)でも、「教師の日」の様子が紹介されていました。

このように「教師の日」以外にも、ロシアには職業を祝う日が決められていて、「宇宙飛行士の日」などは特に盛大に祝われます。国営国際ラジオに勤務していたときには、5月7日のラジオの日は、社長が各部屋を周り皆に挨拶や差し入れをしてくださったり、局内みんなでおめでとう!を言い合ってミニパーティをしたりして祝っていました。消防士の日、エコノミストの日、警察官の日、法律家の日・・・ほかにもたくさんあります。

「新しい1年を迎える喜び」や「先生への感謝」、「学びへの敬意」――こうした気持ちは、国や文化を越えて響き合うものでしょう。

後編では、ロシアの文房具やノートの違いから見えてくる、「学びの道具たち」の文化をご紹介します。

アトリエから世界へ ― 芸術家ズラブ・ツェレテリを辿る旅 後編

2025-05-20

ジョージアとロシアを代表する芸術家であり、ロシア美術アカデミー総裁を務めたズラブ・ツェレテリを悼んで、前編では彼の作品が彩るモスクワの街並みや、壮麗なアート・ギャラリーをご紹介しました。

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△芸術家ズラブ・ツェレテリをテーマに自ら制作した作品

後編では、ジョージアの名のついた通り(ボリシャヤ・グルジンスカヤ通り)にあるもうひとつのツェレテリ美術館をご紹介。さらに世界各地や日本で出会える作品にも注目していきます。

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△ツェレテリのアトリエを改装した美術館は、「もうひとつの顔」に触れることができる場所です。

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△エントランスでは、国民的歌手アーラ・プガチョワが両手を広げて来館者を迎えてくれます。

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△アート・ギャラリーと同じく圧倒的なスケール感がありながら、どこか実験的で、遊び心を感じさせる空間が広がっています。

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△国際的な活動も盛んだったツェレテリは、“世界中に巨大な彫刻作品を贈る芸術家”としても知られていました。館内には、ツェレテリが参加した国際展の記録や、各国での活動もパネルで紹介されています。

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△ こちらは、アメリカ同時多発テロ事件の犠牲者を追悼して制作されたモニュメント『悲しみの涙(Слеза скорби/Tear of Grief)』の縮小版。高さ約30メートルの実物は、ニュージャージー州のハドソン川沿いに設置されています。中央には涙を象徴するしずく型のモチーフを配し、悲しみと連帯の想いを表しています。

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△『善は悪に勝る(Good Defeats Evil)』は、1990年の国連創設45周年を記念し、ソ連からニューヨークの国連本部に贈られた作品です。聖ゲオルギウスがドラゴンを倒す構図で、このドラゴンの部分は実際のミサイルの破片で制作されました。これは、1987年の中距離核戦力全廃条約(INF条約)に基づき廃棄されたソ連とアメリカのミサイルを用いたもので、核軍縮と平和の象徴として位置づけられています。(国連のHPより写真転載)

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△コロンブスが卵の殻の中から現れる姿を表現した『新しい人間の誕生』の縮小版。1995年のアメリカ大陸発見500周年を記念して、モスクワ市からスペイン・セビリア市へ贈られました。

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△ 屋外には、カラフルな彫刻が溢れる彫刻庭園も見どころのひとつ。

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△こんなふうに作品に入り込んで・・・

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△気に入った作品と一緒に写真撮影することもできます。

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△敷地内にはジョージア正教の教会や、

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△ジョージアの食堂やジョージアのパン屋さんも併殺されており文化を五感で味わうことが出来ます。

ツェレテリと日本

さて、ツェレテリ作品は、日本国内でも鑑賞することができます。

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△東京・港区の在日ロシア連邦大使館の絢爛豪華なシャンデリアがきらめく大レセプションホールには、

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△ツェレテリの銅版画『首都モスクワ、我がモスクワ』が圧倒的な存在感で展示されています。式典やコンサートを荘厳に華やかに演出しています。

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△また、ホールへ続く大階段を鮮やかに彩るステンドグラス作品『旗』もツェレテリの作品です。

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△こちらは、日ロ国交回復50周年を記念して制作された鳩山一郎元総理の銅像。モスクワ市から鳩山家に寄贈され、東京・文京区の鳩山会館に設置されています。

芸術に国境はない。

そう信じ、情熱と愛にあふれた創作活動をつづけたツェレテリの生涯は、多くの人々に刺激を与えました。

彼の手がけた力強い作品とエネルギーは、モスクワで、東京で、そして世界の街で、これからも生きつづけていくでしょう。