『抱擁、あるいはライスには塩を』江國香織・著(集英社)
東京・神谷(かみや)町の洋館に住まう、どこか浮世離れした柳島家の、三世代、百年にわたる愛と秘密を描く長編小説。今改めてモダンに映える古典柄の着物の帯のように流れていくストーリのなかで、ヨーロッパ遊学中の呉服屋の若旦那とイギリスで出会うことになる、1917年に生まれロシア革命で亡命したロシア人の祖母・オリガ(日本名は絹)の存在が金糸のようにアクセントになって、この家族の血筋にロシアの香りを漂わせます。食事にロシアのスープ料理“ボルシチ“や”サリャンカ”や蕎麦の実のお粥“カーシャ“、キャビアをのせたロシア風クレープ“ブリヌィ“、グルジアのチーズパン“ハチャプリ“、ロシア風水餃子“ペリメニ“が登場したり、ロシア語の数字1〜10、挨拶、おじいちゃんがよく使っていたという “Ладно, ладно.(わかったわかった、了解了解、のような意味)や、家族のあいだでだけ使われる合い言葉に“かわいそうなアレクセイエフ””みじめなニジンスキー”があったり。ロシア人ピアノ教師の見合い相手、日ソ通商条約、フランス人形みたいと言われて「血筋としてはマトリョーシカです」と切り返してみたり・・・ロシアを探しながら読むのも一興です。女性誌SUPRで4年4ヶ月かけて連載された人気作品です。
過去関連ブログ
солянка(サリャンカ)は、ソーセージとオリーブ、塩漬けきゅうりが入っているスープ。お肉もお野菜も入っているのはボルシチと同じですが、またちょっと違う味わいで、人気があります!
カーシャについては☆【今日のロシア】WORLD BREAKFAST ALLDAYでロシアの朝ごはんレポート
ハチャプリについては