ブリティッシュ・ガーデンの秋を訪ねて、フェントン・ハウス(Fenton House)へ。
およそ17世紀~18世紀の美しい建物が並ぶ閑静な住宅街ハムステッドの一角にあります。
もともとは裕福な商人の邸宅だったそうで、その後さまざまな人に受け継がれ、1793年に商人フィリップ・フェントン(Philip Fenton)がこの屋敷を購入しました。もともとはヨークシャー出身で、当時のロシア(現在のラトビアの首都リガ)に拠点をおいてバルト海を中心に英国との貿易などで成功していたというフェントン氏が亡くなった後、甥にあたるジェームズ・フェントン氏が相続しました。ジェームズ・フェントン氏は、リガ で結婚し7人の子供に恵まれました。
△ジェームズ・フェントン(左)の長女マーガレット(右)はリガ で生まれました。1796年に家族とともにこの英国のフェントン・ハウスへやってきて、結婚までここで暮らしました。1814年にEdward Clive Bayleysと結婚し、サンクトペテルブルクで新婚生活を送りました。6人の子供に恵まれましたが、唯一の男の子だったエドワードを出産した後の1821年に、マーガレットは39歳の若さで亡くなってしまい、スモレンスク墓地に埋葬されました。このポートレートは、フェントンハウスで暮らしていた1805年頃に描かれたものだそうです。マーガレットの生涯も、そしてサンクトペテルブルクでの日々もとても興味があり、いつかまた調べてみたいです。
どの部屋のインテリアも美しく、調度品にも陶器のコレクションにもうっとりしてしまいます。実は残念ながらフェントン氏のコレクションではないのですが(!)、ナショナル・トラストの素晴らしい鍵盤楽器コレクションがこのフェントン・ハウスで展開されています。どのお部屋にもみたことのないような美しいピアノが置かれていて見事にアクセントになっています。さらにはピアノ・ミュージアムといっても過言ではない屋敷内では、17〜18世紀のハープシコードなどをピアニストが実際に演奏している音色が常に聴こえてくる粋な演出も。数曲ごとにお部屋と演奏するピアノを変えるため、音色の違いも楽しめます。作曲家メンデルスゾーンが1829年9月4日に7歳の少女(Miss Honora Tayler)のために書いたというCapriccio in E minorの楽譜も展示されていました。
△レディ・ビニング(Lady Binning)はこのフェントン・ハウスの最後の所有者で、その後はナショナル・トラストが管理してミュージアムとして公開しています。お部屋ごとに落ち着いたパステルカラーに塗り分けられた壁、カーテンや刺繍などファブリック類もとても女性らしい優しい雰囲気でまとめられたインテリアで、優美な曲線を描くまろやかな色合いの調度品、そして陶器コレクションをはじめとするロマンチックな小物の数々・・・どのお部屋にもお気に入りの愛するものたちが大切に陳列され、居心地良くまとめらていました。
△ドイツのマイセンのものが多いよう。マーガレットがロシア・サンクトペテルブルクから持ち込んだインペリアル・ポーセリンはないかしら・・・?なんて気になりつつ鑑賞しましたが、見つけられず。
秋の草花でいっぱいのガーデンへ・・・
△四季それぞれの美しさがありますが、秋のお庭の可愛らしさは特別です。アップル・ピッキングも大人気!(今年は残念ながら中止予定)
△たくさんの種類のりんごや洋梨、キッチンガーデンにはかぼちゃも。
△かつては外壁に時計がついていたためクロック・ハウス(Clock House)と呼ばれていました。(正面の白い丸の部分が時計跡)このあたりではじめに登場した赤煉瓦造りの建物だったそうです。
△かごいっぱいの可愛らしいもぎたての小さな林檎は「ご自由にどうぞ!」甘酸っぱいりんごを齧りながらの庭園散策もまた素敵です。
Fenton House
住所: Hampstead Grove, Hampstead, London, NW3 6SP
URL:www.nationaltrust.org.uk/fenton-house-and-garden