ロシア語の熊“Медведь”のなかには、蜂蜜“Мёд”が含まれているのですが、よく熊にたとえられるロシア人の生活に、やっぱり蜂蜜は欠かせません。
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モスクワでは年に数回、大規模な蜂蜜市が開かれ、
スーパーや市場でも幅広い品揃えを誇ります。
ショーケースにずらりと量り売りの蜂蜜が並ぶ専門店まであって、
液体から固体、白っぽい黄色から黒っぽい飴色のものまで、
店員さんが説明しながら、小さな匙ですくっては次々と味見させてくれます。
「風邪をひいた」というと「蜂蜜を食べなさい」とロシア人。
「肌が乾燥してかさかさ」というと「蜂蜜をぬりなさい」とロシア人。
ロシアでは、薬にも、化粧品にも、使われます。
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またロシア正教では、信者たちが黄色い蜜蝋に火を灯すので、
薄暗い教会のなかはいつも、ほんのり甘い匂いで充満しています。
「蜜蝋にはこんな細工の施された美しいものも!」
そしてウォッカより昔から飲まれていたのも蜂蜜のお酒で、
今でも冬になると“甘酒”ならぬ“蜂蜜酒”の屋台が出て、
とろりとした舌触りの一杯で、体をぽかぽかに温めてくれます。
さらに、ロシアの伝統的クッキー“プリャニキ”も蜂蜜入り。
木型に入れて模様をつけたり、文字を浮かび上がらせたりして
親しい人に贈る習慣があったそうです。
さて、「アカシアの」「レンゲの」といった有名な定番ものから、
「蕎麦の」「栗の」「ラベンダーの」といったちょっぴりクセのある珍しいもの、
「トウダイグサの」「リンデンの」「草原の」といった初めて聞くもの、
ロシアには、未知の美味しい蜂蜜がまだ何十種類とあるようです!