(ロシア文化フェスティバルblogより)
ロシアでは1月1日の新年に加え、ロシア正教のクリスマスを7日に、そして旧暦のお正月を祝います。今年2015年の旧正月にあたる1月14日、ミハイロフスキー劇場プリンシパルダンサーのイリーナ・ペレン&マラト・シェミウノフを迎え新春 チャリティー ガラ コンサートが開催されました。ロシア人と日本人が集まって華やかに新年をお祝いしました。
会場となったのは、東京タワーを背景にロシア国旗がはためくロシア大使館。
日本ではクリスマスツリーですが、ロシアでは新年をお祝いするために飾られるもみの木が美しく飾られたエントランス。
彫刻家ズラフ・ツェレテリ作のステンドグラス『旗』に彩られた大階段を登り、絢爛豪華なシャンデリアがきらめく大レセプションホールへ。正面には同じくツェレテリによるモスクワの街を俯瞰した銅版画『首都モスクワ、我がモスクワ』が圧倒的な存在感で広がっています。
新しい一年のはじまりに、そして、これからはじまる世にも稀なバレエ公演への期待感に、会場の熱気が最高潮に達したとき、アファナシエフ駐日ロシア大使の挨拶、つづいて主催のちきゅう市民クラブの千代鳥モーミンウッデイン会長と川島佳子副会長からの挨拶でコンサートは幕を開けました。
まずは私たちの未来のスターをご紹介しましょう!と大使に紹介されて登場した大使館の高校生オリガ・ロマノワさんが、ピアノと歌の贈り物を数曲。
つづいて、現在日本を拠点に活躍していらっしゃるロシア人アーティストを代表し、元マリインスキー劇場ピアニストのユーリー・コジェバートフさんと元国立プリモールスキー・フィルハーモニー専属ソリストのメゾ・ソプラノ、ワレンチナ・パンチェンコさんによる演奏で、ドゥナエフスキー『乾杯の歌』『初恋』。今年10回目を迎えるロシア文化フェスティバルIN JAPANでも、これまで数々のステージを披露しているお二人の息はぴったり。
そして、ピアノと歌から流れるように、ミハイロフスキー劇場マリア・シェスタコーヴァのヴァイオリンが加わり、グルック『メロディ』の旋律に誘われ、ホールの客席中央を通ってシャンデリアのなかをぬって泳ぐようにリフトで登場したイリーナ・ペレンとマラト・シェミウノフに、会場は息をのみ、そして歓声が沸き起こります。
ミハイロフスキー劇場の大舞台で多くのダンサーを率い、また日本公演でもこれまで数えられないほどの感動を与えてきた二人が、同じ空間のなかで、すぐ目の前で、繰り広げる世界に包み込まれてしまうような、そんな世にも贅沢な感覚に観客はうっとりと酔いしれます。
ヴァイオリンピアノによるスヴィリドフ『ロマンス』、チャイコフスキー『ロマンス』につづいては、イリーナ・ペレンによる『白鳥の湖よりロシアの踊り』。赤い民族衣装を身につけ、愛する祖国への想いを重ねてロシア人は惜しみない盛大な拍手を贈り、ロシアの芸術美に涙する日本人も。
ロシアが世界に誇るトップバレエダンサーの踊りを目の間にするその臨場感といったら・・・!入退出時も拍手する手が届いてしまいそうです。
かつて宮中で披露されたバレエを鑑賞する皇帝になったかの贅沢さ。今の世の中では、一生に一度あるかないか機会かもしれません。
ピアノソロでチャイコフスキー『四季より10月、11月、12月』、ピアノと歌でチャイコフスキー『ただ憧れを知る者だけが』ルビンシテイン作曲プーシキン詩『夜』そして再びピアノでラフマニノフ作曲『幻想的小作品集 Op32番 前奏曲 嬰ハ短調』をはさみ、最後のバレエは、ラフマニノフ『春の水』でした。
〜野原はまだ雪に覆われているが 春の水は もうざわめいている
眠たそうな岸辺を流れて 流れ、きらめき、そして歌う
彼らはあちこちでこんな風に歌っているのだ
「春が来たよ 春が来たよ! ぼくたちは若い春のメッセンジャーなんだ
春がぼくらを先に寄こしたんだ 春が来たよ 春が来たよ!」
そして静かで暖かい5月の日に赤く輝く踊りの中に
春につき従ってみな陽気に群がるのだ〜
パンフレットには詩人であり外交官でもあったチュッチェフの詩『春の水』が添えられていました。長く厳しい冬を過ごし、万感の思いを胸に春を待つロシアの魂が表現され、集まった人々の心に春の水を吸い込んで可憐に力強く雪の下からのぞく待雪草の花が咲いたようでした。こういう瞬間こそが、両国の間にもきっと春の水を注ぎ込んでくれるのだと、ロシア文化フェスティバルIN JAPANのプログラムに足を運ぶと感じるのです。
イリーナ「今日のプログラムをご覧頂いて気づかれた方はいらっしゃるでしょうか?1曲目は白い衣装、2曲目は赤い衣装、3曲目は青い衣装・・・そう、ロシア国旗になっているんです!ロシアバレエを代表して皆様の前で踊ることが出来て本当に光栄ですし幸せに思います。これまで何度も来日公演をしてきましたが、大使館で踊るのは初めての経験でした。高い質のコンサートになり、またお客様が温かく迎えてくださり、お祝いムード満点でした」
(その2につづく)