前編ではロシアの入学&卒業シーズンについてご紹介しましたが、 学校生活のもうひとつの楽しみといえば、学用品。毎日手にする文房具などもその国の文化や価値観が表れやすいアイテムです。
ロシアで子育てをしていた私は、日本との違いにたびたび驚かされました。今回は、ロシアの「学びの道具」たちをご紹介します。
実はロシアでもランドセルが大人気!
私がモスクワで暮らしていた2017〜2020年、日本ではお馴染みの“あるもの”がロシアで大流行していました。それがなんと…日本のランドセル!
赤や黒のランドセルが、中央子どもデパートをはじめ、百貨店「グム」のショーウィンドーを飾り、まるで日本の新学期がそのままロシアにやって来たかのよう。人気の背景には「日本の高級品」というイメージに加え、耐久性・機能性・美しさへの憧れがあるようでした。
△ブログ前編でもご紹介したロシア人美少女モデル、アナスタシヤ・クニャゼワちゃんも、Instagram(@knyazeva_anastasiya_official)のなかで、ロシアのランドセルショップで購入したお気に入りのランドセルを紹介!またランドセルを背負ったお洒落なファッションをたくさん披露して、当時の子どもたちの注目の的に!
△街中でも実際にランドセルを背負った学生さんとすれ違うこともありました。
△店員さんによると、2015年頃から少しずつ見かけるようになり、2017年に人気が一気に高まったとのこと。
△中央子どもデパートのなかのランドセル店(2022年)日本同様、定番の赤や黒だけでなく、水色やラベンダーなどカラーバリエーションも豊富です。(関連☆モスクワ通信『60周年を迎えたルビャンカの中央子どもデパート』)
青いボールペンが基本です
ロシアの文房具売り場でまず目に入るのが、青いボールペンの豊富なラインナップ。日本では公式書類には黒が一般的ですが、ロシアでは青インクが主流です。理由は、「印刷部分と直筆部分が見分けやすいからでは?」という説も。
学校でも、日本では鉛筆でノートを取り間違えたら消しゴムで消すのが普通ですが、ロシアの子どもたちは青いボールペンで書き、間違えても線で訂正。
「間違いも学びの一部だから、残すんだよ」という考えが印象的でした。
△私のお気に入りは、グジェリ柄やホフロマ風の青ペン。文具コーナーでも青インクは目立つ存在でした。
ノートはA5サイズが定番。
△ロシアのノートは、日本のB5より一回り小さいA5サイズが主流。△ソ連時代から変わらぬこちらのノート(2ルーブル50コペイカ)。先日訪れた『子ども時代ミュージアム』にも展示されていました。(関連☆モスクワ通信『60周年を迎えたルビャンカの中央子どもデパート』)・・・
△中身は「横罫(в линию)」と「方眼罫(в клетку)」の2種類があります。
△表紙には「教科・学年・クラス・学校名・名前」をロシア語でしっかり書き込む欄が。記入の仕方をロシア人のお友達に見せてもらいました。日本では固有名詞や人の名前は変化せず、“て、に、を、は”などの助詞を使って活用しますが、ロシア語では名詞そのものの末尾を変化させて活用するため、なんと人の名前まで変わってしまいます・・・!
△裏表紙にはよく筆記体の練習見本がついています。
新学期シーズンには、カラフルなデザインのノートが並び、あれもこれも欲しくなってしまいます。表紙にはプーシキンやレフ・トルストイなどの文学者、宇宙飛行士や科学者など、子どもたちが尊敬する人物たちが描かれていることも多く、「憧れとともに学ぶ」文化が根付いているように感じます。
△たとえば、プーシキンと学ぶ“文学“のノート
△文学、ロシア語、歴史、化学、こんなシリーズで揃えるのも素敵ですね!
△「外国語学習ノート」には日本の国旗も発見!語学ノートの中身は、単語・意味・用例が書ける仕様で、ロシア語学習にもピッタリでした。
ちなみに教科書の多くは伝統的に、学校から支給されたり図書館から借りたりして、先輩のお下がりを大切に使い、また学年末には次の学年のために返却していました。ここは日本でも取り入れてみたら良いかもしれませんね。
ソ連時代の定番文具も健在
さきほどのノートも「ソ連時代からの定番」ですが、ほかにも印象的だったのが、ハリネズミの鉛筆立て。鉛筆を立てるだけでなく、定規や消しゴムを挟んだりもできる実用性と可愛らしさを兼ね備えた一品です。とっても便利で可愛らしいのに、少しずつ見かけなくなってきました。緑豊かなロシアでは、森の中などでよくハリネズミをみかけるため、ロシア人には親しまれていて、子ども向けのグッズにもイラストが描かれています。
△こちらは、レストランで見つけた子ども向けの塗り絵のサービス
△もうひとつの定番が、カラフルな本立て。アニメ「ミーミーミーシュキ」のキャラクター入りなど、今も子どもたちに愛されています。
学用品以外にも、ロシアの学校や学校生活には日本とは違う面白い発見が詰まっています。たとえば、ソ連時代の名残りでたくさんの学校名が番号で呼ばれていたり(例:810番学校、1239番学校のように)、登校したら学校で朝ごはんを食べることとか、挙手の仕方とか、
勉強も遊びも、子どもたちにとっては「世界を広げる冒険」。道具の形は違っても、「学ぶことの楽しさ」は万国共通。ロシアの文房具売り場には、そんな世界共通のまなざしと、ちょっとした異文化のトキメキが詰まっていました。