念願だった河口湖の久保田一竹美術館へ、ついに行ってまいりました。
ここは、富士山に臨み日本美を堪能出来る場所であり、そして芸術が日本とロシアとの友情を繋いだ証でもあります。
産休明け初のVOR東京特派員レポートで取材したのが「ロシア富豪が日本の宝を救う!」でした。
「辻が花」と呼ばれる絞り染めで何枚もの着物を組み合わせ、富士の姿を描いてきた染色工芸家の久保田一竹氏の美術館が倒産。競売にかけられた作品が世界中にばらばらになってしまう危機を救い、この美術館と作品を守ったのが、一竹の作品を心から愛し、この美術館へ何度も足を運んだロシア人のショディエフ氏でした。
2011年に久保田一竹の世界を世に広めるための展覧会を東京で開催。さらにその後、モスクワでも開催し大きな反響を呼びました。写真はその展覧会で、ショディエフご夫妻と。
その展覧会があまりにも素晴らしかったので、ぜひとも訪れてみたかった久保田一竹美術館。インドの古城に使われていたという門から、一竹ワールドのはじまりです。
展示はもちろん、建造物、そして豊かな日本の四季を感じさせる庭園にいたるまで、一竹の究極のこだわりが感じられます。
この眺めでピンとくる方も多いことでしょう!美術館の新館は一竹が好きだったというスペインの建築家アントニオ・ガウディのグエル公園を模して作られたそう。
館内のインテリアは、インドや東南アジア、アフリカなどのアンティーク家具で品よくまとめられ、不思議な統一感といごこちの世界のどこにもない一竹のお城になっています。
△茶房「一竹庵」では龍門の滝が流れおちる池に、黄金のヤマメが悠然と泳ぐのを眺めながら、お抹茶をいただくことができます。ほかにも骨董商だった父の影響で幼い頃から魅入られ、古代人たちの美意識が凝縮した小宇宙として生涯コレクションしていた蜻蛉玉(とんぼだま)のコレクションギャララリーやミュージアムショップ、カフェなども素敵でした。
そして、いよいよ本館。樹齢1千年を超すヒバの大黒柱16本を使った建築物は、まさに和製ピラミッド!
△本館写真は美術館公式サイトより。
たとえばモスクワのトレチャコフ美術館やサンクトペテルブルグのエルミタージュ美術館は、展示されている建物、窓からの景色も含めて絵画を楽しむことができますが、ここは、和の芸術を和の空間で堪能できる日本が誇る美術館です。一竹が富士山を描いた染色工芸シリーズが連なる様は本当に涙が出るほど美しく、実際に染色に使われた道具類なども展示されていましたが、この場所で富士を眺めながら一糸一糸想いを込めて染色して行ったのだと思いを馳せると、ショディエフ氏のおかげでこの富士山に臨む場所が残されたことに日本人として改めて感謝の気持ちでいっぱいでした。
人、自然、芸術、三位一体。四季四装まとう奇跡の館。というキャッチフレーズにふさわしい美術館です。