黄金の輪をなす古都のひとつウラジーミルから南へ。同じウラジーミル州のなか、ロシアのクリスタル・ガラスの里グシ=フルスタリヌイ(Гусь-Хрустальный)があります。(2019年)
グシ=フルスタリヌイは“水晶のガチョウ”を意味しています。ガラスの里にぴったりの美しい水辺。さっそくクリスタル・ガラス工場見学へ。
△さびれた雰囲気の工場が、長い歴史を感じさせます。
△1756年創業のクリスタル・サロン(Салон Хрусталя)は、白鳥の湖ならぬ湖の白いガチョウがトレードマークです。
入り口脇には、ロシア国旗&国歌、工場の歴史が掲示してあり、壊れ物の注意書きがついたガラス製品入りのコンテナが無造作に置かれていました。そもそもの始まりは1723年、商人ワシーリー・マリツォフ(Василий Юрьевич Мальцов)がモスクワ郊外の村にクリスタル・ガラス工場の設立を許可されたことから歴史が始まったと考えられています。数年後、ワシーリー・マリツォフは息子のアキム&アレクサンドル兄弟にこの工場を受け継ぎます。しかし1747年には、モスクワに火事が及ぶ危険性から近郊での工場設立が禁止されるようになり、マリツォフ兄弟が工場を移した場所がこの自然豊かなグシ=フルスタリヌイだったのです。展示会などで披露されるたびに国内はもちろん国際的にもロシアのグシ=フルスタリヌイのガラス製品の評価は高まり、1900年パリ万博でグランプリ受賞など数々の賞にも輝きました。しかし近年は、欧米諸国のガラス製品に押され気味で一度は工場も閉鎖されたものの、ロシアを代表するクリスタル・ガラス製品として、今も変わらぬ技術と伝統を守り続けています。
かまどのなかにガラスの塊を入れて高温で熱し、成形していきます。大声を出さなければ隣の人の話し声が聞こえないほどのボウボウと燃えさかる炎の音、汗を流しながら屈強な男性たちが黙々と作業しています。時折、うまく仕上がらなかった作品を割るガシャーンという音も聞こえます。
△熱したガラスの玉から、ピンセットのような道具でスーッと首を伸ばし形を整えたら、あっという間に白鳥が現れました・・・!
△挑戦させていただきました!熱したガラス玉がついた棒は、ゆっくりと一定のスピードで回していかなければ、すぐに球が偏ってしまいます。簡単そうに見えて、なかなか難しい!「上手、上手!よし、ここで今日から働きなさい」優しい職人さんのお言葉。
続いては、やすりを前にガラス製品をカットしていく作業を見せていただきました。
工場見学の最後には、ミュージアムとショップもありました。ミュージアムではクリスタルガラスの美しい色ごとに分けて代表作を展示するコーナーや、これまでの工場の歴史の中で誕生した一点ものの記念品や企業ロゴ入りのユニークなコラボ商品、大作、時代を反映したシリーズ作などどれもこれも貴重なものばかり。