新型コロナウイルスの感染対策のための外出禁止で、今年は例年よりも静かなパスハを迎えたモスクワです。
キリスト教の西方教会の復活祭(イースター)と東方教会ロシア正教の復活大祭(パスハ)は、使用する暦が異なるために違う日に祝われています。(重なる年もあり、次回は2025年)今年2020年は4月18日から19日にかけての夜にロシア正教会で復活祭の礼拝がありましたが、いつもはたくさんの信者が集まる教会に、一般の立ち入り禁止で取りおこなわれました。モスクワ中心部にある救世主キリスト聖堂(Храм Христа Спасителя)では、モスクワ総主教座キリル総主教による復活祭の礼拝があり、毎年TVでも生中継されます。(23時半〜2時半)
△大小さまざまな鐘を両手両足を使って奏でるロシアの教会の鐘の美しさは、ロシアの芸術家たちにインスピレーションを与え、さまざまな作品にもなっています。部屋の窓を開けると、遠くから鐘の音が聞こえてきました。どの家も窓辺に温かな灯りが灯っています。この中継を家族で一緒に見守っている家も多いのでしょう。
この礼拝の後、いつもは大きな十字架を先頭に、火を灯したロウソクを手にした信者たちが教会の周りを歩く十字架行進が見られます。
いつもなら、モスクワの町ではシーズンズ・フェスティバルのパスハのデコレーションが登場し、駅前や市場では猫柳が売られたり、スーパーマーケットの特設コーナーで卵やその飾り、手作りキット、パスハに食べる“パスハ”の材料などが並んだり・・・パン屋さんやケーキ屋さんもその店自慢の“クリーチ”を焼いたりと賑わいます。
△クリーチと彩色された卵のセットは、外出制限のなか食材を買うために訪れたスーパーマーケットにて。西方教会のイースターは、ウサギと卵のモチーフが多いですが、ロシアでは美しく彩色された卵の飾りが多いです。卵を置いておくお盆も、教会の絵やグジェリ陶器&ホフロマ塗り柄などさまざまです。
△卵は玉ねぎやビーツとともに煮て色付けするのが昔ながらの方法。卵にくっつけるシートは一般的になりましたが、他にも可愛らしい卵を作るキットを見つけたので息子と試してみました。ロシア版クックパッドを見ると、復活大祭の特集ページで、芸術的な大理石模様の卵などユニークなレシピがたくさんありました。
△クリーチと呼ばれる円筒形のケーキ。“受難の1週間”と呼ばれる“パスハ”までの一週間に、信者はさまざまな用意をします。たとえば、1週間前の日曜日は“聖枝祭の日曜日”。キリストがエルサレムに入場するとき、群集がシュロの枝をふって歓迎したと言われていますが、寒いロシアでは、この時期シュロの枝が手に入らないため、代わりにネコヤナギの枝を購入します。そして木曜日がクリーチを焼く日です。上手に焼けるとその家族に幸せが訪れるといわれたりもします。
△パスハを用意して祝います。ロシア人の大好きな新鮮なトヴォロク(ロシアのカッテージチーズのようなもの)や無塩バター、スメタナ、コンデンスミルクなどの材料(家庭によってレシピは違います)をよく混ぜ合わせます。頂上のないピラミッド型をしたパスハの型(ハリストスの棺を象徴)にガーゼを入れ、なかに先ほどのトヴォロクを入れて、およそ一晩冷蔵庫の中で水切りします。レーズンなどドライフルーツを入れたチーズケーキのようなパスハが完成します(パスハからレアチーズケーキが生まれたという説も・・・)。
△型(пасочная)は分解して毎年利用できます。もともとは木製でしたが、現在はプラスチック型もあります。ХВの文字は、Христос воскрес!(キリスト復活!)の略。パスハの日には、Христос воскрес! Воистину воскрес! と挨拶します。また十字架も西方教会とは少し違っています。シンプルなもの、ドライフルーツやナッツを入れたりデコレーションしたりしたもの、バニラ味にココア味など、アレンジされたさまざまなパスハもあります。
敬虔な信者にとっては、7週間にもわたるポスト(大斎期)の後にやってくるのがパスハなので、家族で囲むテーブルにはたくさんのご馳走が並びます。
Христос воскрес! Поздравляем всех православных с праздником!
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