ナショナル・ギャラリーでファン・ゴッホ作品を見てから(☆【英国のなかのロシア】はじまりはロシア人のコレクション!英国が誇る西洋絵画の殿堂ナショナル・ギャラリー)、この夏は2つのファン・ゴッホ作品を味わう展覧会へ。昨日の『Van Gogh: The Immersive Experience』につづき(☆2日連続!夏のファン・ゴッホ展 その1 日本の浮世絵から、そしてロシア文学からもインスピレーション!)、今日は『Van Gogh Alive』を観るためKensington Gardensへやってきました。
△エントランスは満開のアーモンドの木!(☆桜満開!イギリスはアーモンドチェリー、ロシアはチェリョームハ)弟テオに長男が誕生したときに、その喜びを絵にして贈ったものです。テオを息子に、兄と同じくフィンセントと名付けたそうで、完成した絵は、フランスに住むテオの家に飾られていたそうです。幼い頃から少し人とは違う部分を持ち、生きにくさを感じていたであろうゴッホのそばで、生涯の理解者として寄り添い、フランスで画商をしながら一生兄の金銭的な援助も引き受け、自殺とも言われている謎の死の前には兄のそばに駆けつけて一晩を共にし、死の後には後を追うようになくなってしまいました。
△絵の中に入り込むように・・・ファン・ゴッホの部屋のなかで記念写真を撮ることができます。
そしていよいよ、作品を体感できる世界へ・・・昨日の展覧会よりも音楽と作品のハーモニーで楽しめるようになっていて、作品やテーマに合わせた曲選び、そして音やリズムに合わせて変化していくパネルスクリーンにすっかり夢中です。昨日は1つの部屋のなかでデッキチェアに横になってリラックスし、4方向の壁に映し出される作品に身を浸しましたが、今日はいくつかのホールがつながっていて、パネルの形も配置もさまざまななので、より好きな場所で好きなパネルの組み合わせで見ることができます。場所をかえてみたり、歩きながら見たり座ってみたり・・・何時間でもずっとここでファン・ゴッホ作品の世界に浸って過ごすこともできます。
さくらさくらの曲が流れると・・・ファン・ゴッホの表現する“日本”のはじまりはじまり!
△フランスで浮世絵に出会い、流行していたジャポニズムに影響を受けたファン・ゴッホはその浮世絵のなかの想像の(妄想の?)日本に憧れていたそうです。その想いが高まり、日本のような場所を追い求めて、南仏のアルルへと移り住みます。
△世界に現存しているいくつかの『ひまわり』のなかでも、8月のアルルで太陽に向かってエネルギッシュに咲くひまわりに感銘を受けて描いたというこのナショナル・ギャラリー収蔵の『ひまわり』が好きです。画家たちが共同生活を送るための理想の家『黄色い家』を借りて、そのダイニングに飾ろうと描いた1枚は、黄色い背景にあるひとつの花瓶からそれぞれに大きな花を開き、同世代に生きる個性豊かな画家たちと絵画へ向かうほとばしるエネルギーを感じさせます。
8月のひまわり畑が・・・!
絵画の可能性を追求して、世界をポワンティズムやキュービズムで描いた画家たちとは逆に、「見たものを見たようにしか描けない」と語っていたというゴッホ。世界がこんな風に見えていたのだとしたら・・・
美術館を訪れると、いつもは作品と向き合って、じっくり見て味わって自分の心と身体のなかで想像の翼を広げていきます。一方、昨日と今日の2日連続で訪れた展覧会は、音と光と色で生き生きと躍動する作品世界の空間のなかに入り込んで、心と身体を浸して、そのエネルギーを感じるような体験でした。
△ロシアでも、ファン・ゴッホ(Винсент ван Гог)はとても人気があります。西洋絵画の膨大なコレクションを持つエルミタージュ美術館(画像は公式サイトより)では、大好きな『ライラックの潅木』«Куст»(1889)をみました。ロシアの初夏を知らせる花ライラック。甘やかな香りと妖しげな美しさで街を満たし、白夜のように日が長くなっていくこの季節に紫色のグラデーションで魅了します。作曲家ラフマニノフや画家クストジエフなど、たくさんのロシアの芸術家たちがこのライラックの美しさを作品にしています。(☆【ロシアの音楽】ラ♪ラ♪ラ♪ ライラック満開のモスクワ)ほかにも、«Арена в Арле»、『アルルの女』«Воспоминание о саде в Эттене (Арльские дамы)»、『茅葺の小屋』«Хижины»(1890)、『家と耕す人の風景』«Пейзаж с домом и пахарем»(1889)、«Утро. Отправление на работу (подражание Милле)» 、«Белый дом ночью»、«Портрет г-жи Трабюк» など・・・印象的な黄色、そして光と闇のコントラストで昼よりも明るく夜が浮かび上がるゴッホの世界でした。(☆【水の都サンクト・ペテルブルクを訪ねて】〜まとめ〜)
△プーシキン美術館でも重要な作品を見ることが出来ます。あの謎多き“耳切り事件”(黄色い家で一緒に生活していた画家ゴーギャンと仲違いしたファン・ゴッホ が、自分のことを忘れるなというメッセージとともに、ゴーギャンの居場所と思われる娼館へ耳を送りつけた事件)で、病院に運び込まれたファン・ゴッホの治療にあたり、その後も親身になって支えたとされる医師の肖像画«Портрет доктора Феликса Рея»、生前にたった1枚だけ売れたファン・ゴッホの絵である«Красные виноградники в Арле. Монмажур.»、«Море в Сент-Мари»、«Пейзаж в Овере после дождя (пейзаж с повозкой и поездом)»、『囚人たちの散歩(刑務所の中庭)』«Прогулка заключенных»(画像は公式サイトより)
また、エルミタージュ美術館とモスクワのプーシキン美術館というロシアの2大都市にある西洋絵画の殿堂で、2大ロシア人収集家のコレクション展が同時開催される企画展は素晴らしいものでした。サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館ではイワン&ミハイル・モロゾフ兄弟のコレクション展、そしてモスクワのプーシキン美術館(ГМИИ им. А.С. Пушкина)ではセルゲイ・シューキンのコレクション展でした。(☆モスクワ通信『プーシキン美術館でシューキン!エルミタージュ美術館でモロゾフ兄弟!二大コレクション展同時開催!』)ゴッホと一時期は共同生活を送っていた友人ゴーギャンの作品は特に大きくスペースをさいて展示されていました。
憧れの日本やロシアへ旅することはなかったヴァン・ゴッホですが、亡くなった後にこんなにも多くの作品が多くの国へ旅することになるなんて・・・!