【モスクワのスーパーマーケット探検】〜森の民ロシア人ときのこのある暮らし〜

2025-12-20

森の民とも言われるロシア人は、きのこが大好き。旬の季節になると、森へきのこ狩りに出かけ、採れたてを味わい、それから保存して、長い冬に備えます。きのこを使った美味しいロシア料理もたくさんあります。

日本のきのこ売り場の定番といえば、しいたけ、舞茸、しめじ、えのき茸、なめこ、エリンギでしょうか?

△ロシアのスーパーの生鮮食品コーナーでは、実はそれほど多くの種類のきのこは並びません。そのなかで圧倒的な存在感を放つのが、マッシュルーム。日本よりも大きく肉厚で、お値段も手頃です。生でスライスしてサラダに、ポタージュスープに、チーズをかけてグラタン風の料理ジュリエンに。お肉やスメタナ(サワークリーム)と合わせてビーフストロガノフにしたり、ピロシキの具にしたりと、まさに万能選手。以前は、中国市場やアジア食材店でしか見かけなかった日本お馴染みのきのこも、日本食ブームの影響で、モスクワの高級スーパーに『シイタケ』『エリンギ』『エノキ』と、日本語そのままの名前で並んでいたこともありました。

△充実しているのは、瓶詰めコーナー。ロシア人の友人はこう話します。「きのこはスーパーではほとんど買わないの。旬の時期に森でたくさん採って、あとはダーチャで瓶詰めにしておくのよ。食べたい時は、それを使うの。」(関連☆モスクワ通信『郊外の菜園付きの別荘ダーチャでくつろぐ初夏の一日』

△市場やお惣菜コーナーには、塩漬けきのこがずらり。つぎつぎに味見させてくれるので、お好みのきのこを量り売りで購入でき、ポルチーニ(Белые грибы)をはじめ、乳茸(Грузди)、ヌメリイグチ(Маслята)など種類も豊富です。「ウォッカには、これがなくちゃね。」隣に並んでいた男性が嬉しそうに教えてくれました。

△冷凍食品コーナーでは、なめこのようにぬめりのあるナラタケ(Опята)や、黄色が綺麗なアンズタケ(Лисички)など。

△きのこ味の加工食品も大人気。アンズタケ入りの塗るチーズや、

 

△きのこ&スメタナ(サワークリーム)味のポテトチップスは定番中の定番です。

△ロシアのきのこ料理で、私のおすすめは、きのこのグラタンЖюльен(ジュリエン)。日本でもおなじみのマギーのブイヨンですが、ロシアには「簡単ボルシチ」や「簡単ジュリエン」の素も売られています。

△軽くて日持ちのする乾燥きのこは、お土産としても人気。戻してパスタやスープに加えると旨味がぎゅっと広がります。なかでも一番人気は、ポルチーニ(Белые грибы)。おとぎ話に出てきそうな、まさにザ・きのこ!の形ですね。

△こちらはチャーガ(手前)。以前ご紹介しましたが、民間療法ではロシアでも日本でも、さまざまな効用が語られてきました。主に白樺に寄生するきのこで、かつては白樺の栄養分を奪う“白樺の癌”と恐れられていましたが、研究が進むにつれ「幻のきのこ」と呼ばれるようになりました。

細かく砕いて煮出して飲むほか、最近ではお洒落パッケージのチャーガ茶としてお土産にも人気。癖がなく飲みやすいのも特徴です。(関連☆【モスクワ通信】新型コロナウイルスで再注目!チャーガ茶で免疫力アップ!?

ほかにも、採れたてでなければ食べられず、お店では出会えないベニタケ属のきのこ(Сыроежка)などもあります。まずは、きのこの「かさ」ではなく、「あし」の裏をみて、虫がついていないか確認するのがポイントなのだそう。「小さな頃からママに教わって、森で採っていたから、きのこのことなら任せて!」そう誇らしげに語る友人たちと、きのこシーズンになったら、カゴを手に森へきのこ狩りに出かけたいものです。

△ところで、ロシアではきのこはモチーフとしても大人気。ケーキの飾りにもきのこをよく見かけますし、

△ハリネズミときのこの組み合わせも。

△日本ではあまりないセンスですが、お皿の柄としてきのこが描かれていたり、

△マトリョーシカや民芸品にもきのこ型やきのこ柄を見かけます。

△今の季節なら、クリスマスツリーのオーナメントにも。

△そしてこちらは、日本の子どもたちに愛され続ける、あのきのこ菓子のロシア版⁉︎ 黒と白、2色のきのこが楽しめます。

【モスクワのスーパーマーケット探検】 〜日本と違うロシアの野菜売り場編〜

2025-11-20

日本ではほかほかのお鍋に入れる冬野菜や、クリスマスに向けたカラフルなサラダが店頭を彩る季節になりました。それでは今日は、モスクワのスーパーマーケットの青果コーナーを覗いてみましょう。

△キロ単位の大きな袋で売られているじゃがいも(Картофель)をはじめ、人参(Морковь)、玉ねぎ(Лук)、ニンニク(Чеснок)、生姜(Имбирь)、ブロッコリ(Капуста брокколи)、カリフラワー(Цветная капуста)、アスパラ(Спаржа)、セロリ(Сельдерей)、アボカド(Авокадо)、インゲン(Фасоль)、サヤインゲン(Горошек сладкий)、とうもろこし(Кукуруза)など日本でもお馴染みの野菜がずらりと並びます。

△こちらはウズベキスタン産のトマト(Помидор)。太陽の恵みをたっぷり浴びたウズベキスタンの野菜は、味が濃く、とっても美味しいのが特徴です。枝付きのものも多く、赤やオレンジ、黄色などカラフルなヴァリエーションも楽しめます。

△キュウリ(Огурец)は日本よりも小ぶりで太め。Бакинскийなど表面がつるりとしたタイプも人気です。関連☆モスクワ通信『黄金の輪スーズダリの国際キュウリ祭り』

△葉物野菜(салат)は、苗から育てたものをそのまま販売するスタイルも人気!ハーブの種類も豊富で、雪に閉ざされた長い冬の間には、たっぷりの新鮮ハーブでビタミン補給するロシア人も多いです。ロシア料理に欠かせないディル(Укроп)をはじめ、イタリアンパセリ(Петрушка)、パクチー(Кинза)、ミント(Мята )、レタス(айсберг)、バジル(Базилик)、ルッコラ(Руккола) 、ケール(Кейл)などが並びます。

△日本ではあまり見かけない野菜では、酸味のあるスープに入れると美味しいスイバ(Щавель)や、昔ながらの緑色の炭酸飲料にも使われるエストラゴン(Эстрагон またはтархун)、コールラビ(Кольраби)、アーティチョーク(Артишоки)やフェンネル(Фенхель)、西洋わさび(Хрен)、ラディッキオ(Радичио)、ロマノ(Романо)、コルン(Корн)なども見かけました。関連☆【モスクワ通信】寒い国だからこそ美味しい!ロシアで味わっていただきたいスープ

△日本でもジャガイモ&人参&玉ねぎの「カレー用野菜セット」を見かけますが、ロシアの高級スーパーでは当時流行していたトムヤムクン・ミックス、ロシアの夏定番スープのオクローシカ・ミックスなども売られていました。(関連☆ )

△洗わずそのまま食べられるサラダ用ミックスリーフ(Салатная смесь)には、なんと水菜入りのものも。ロシア語でも「ミズナ(мизуна)」と書かれているので、日本食の影響を感じます。

△日本が恋しくなる野菜といえば、キャベツ。春先には柔らかな緑のキャベツ(Капуста)も出回りますが、普段は白くずっしりと硬いものが主流です。茹でてスープにすると美味しいのですが、千切りなど生食にはお勧めできません。ちなみに、白菜は「中国のキャベツ (Капуста Китайская)」と呼ばれています。

△太ネギや大根(こちらも、ロシア語でもダイコン(Дайкон))も、見かけることはありますが、やや小ぶり。一方、細ネギ(Лук зелённый)やハツカダイコン(Редис)は、比較的いつでも手に入ります。

△ナス(Баклажан)やピーマン(Перец)は、日本とは対照的に大ぶりなものが主流。緑、赤、黄色、オレンジと、どれもパプリカサイズです。大きなズッキーニのようなカバチョク(Кабачок )も、定番野菜のひとつ。

△ロシアのスーパーに欠かせないのが、ボルシチやサラダに使われるビーツ(Свёкла)。生のものも、茹でたものも並んでいます。ホウレンソウ科の植物なので、実は茎もとても美味しいんです。日本のような立派なホウレンソウが少ないロシアでは、ビーツの茎をホウレンソウ代わりに調理することもありました。食卓が鮮やかに!関連☆モスクワ通信『ロシアで味わいたい!ビーツいろいろ』

△甘くてホクホクの南瓜やさつまいもは、残念ながら一般的なロシアのスーパーではほとんど見かけません。。

△日本でお馴染みの栗や南瓜、さつまいも、他にもニラ、青梗菜、かぶ、ゴーヤ、山芋、レンコン、紫蘇、もやし、オクラなどは、中国市場やベトナム市場、また一部のスーパーで購入することができます。新鮮な野菜を求めて、地元の市場へ足を運ぶ人も多いようです。(関連☆【モスクワ通信】あなたはどっち派!?昔ながらの市場から食のテーマパークへ

なお、今回の写真は、品揃えに定評のあるスーパーで撮影したもの。日本のようにいつでも新鮮な食材が揃っているわけではないロシアの普段使いのスーパーでは、季節や日によって、並ぶ野菜の種類や品質がぐっと落ちることもあります。そのため「レシピを考えてから買い物へ」ではなく、「今日はどんな野菜があるかしら?どの野菜が新鮮かしら?」と、スーパーを歩きながら献立を考えるのが日常でした。

そうそう、ロシアに来たばかりの頃、野菜売り場を見て息子が一言。「ロシアなのに“大きなかぶ”はないんだね」……確かに!絵本で見ていたような大きなかぶは、どこを探しても、見当たりませんでした。

今日はどれにする?“甘い誘惑”ロシアの菓子パン図鑑

2025-10-20

焼き立ての香ばしい香りに誘われて、ついつい立ち寄ってしまう街角ベーカリー。

地下鉄の入り口には、行列のできる小さなパンのキオスク。

スーパーマーケットの棚には見たことのない菓子パンが並びます。

クロワッサンやマフィン、ドーナツなど日本でもお馴染みの菓子パンが並ぶ一方で、
ロシアならではの素朴でどこか懐かしい甘い菓子パンたちが、「おいで」と誘惑してきます。

これまでこの連載では、ロシアを代表する黒パン「ボロディンスキー」の七変化や、伝統的な白パン「カラチ」についてはご紹介してきました。今回は“甘い誘惑”ロシアの菓子パンの世界を歩いてみましょう。

☆関連記事:

モスクワ通信『ロシアで流行中!黒パンより黒い・・・』

モスクワ通信『乙女心をくすぐる町コロムナ 元祖ロシア白パン!カラチ博物館』

【トヴォロークを味わう幸せ:ヴァトルーシカとソチニク】

ロシア人の大好きなカッテージチーズ「トヴォローク」。もちろん、菓子パンでもその存在感は主役級。素朴な小麦の香りに、濃くて酸味のあるトヴォロークが広がります。

△「トヴォローク」をのせた丸いパンのヴァトルーシカ(ватрушка)は、ロシア菓子パン界の王道。ほのかな甘みと酸味、しっとりとしたチーズの層が、焼きたての生地と絶妙にマッチして、まるでチーズケーキがそのままパンに乗っているような味わいです。

△一方、ソチニク(сочник)は、トヴォロークを生地で半月型に包み込んで焼きあげます。ほろっと崩れるスコーンのような生地と、レアチーズのようなフィリングのバランスが絶妙で、優しい甘さの“ ロシア版スコーン”とも言える存在です。

【ロシアのあんぱん!?ポピーシードのパン】

△日本では「あんぱん」が話題ですが、ロシア版「あんぱん」にあたるのが、ケシの実(ポピーシード)の餡が入ったパン。ぷつぷつとした食感とごまのような独特の香ばしさがクセになる味で、ねじりパンや渦巻き状など、見た目もさまざまです。日本では主に花屋さんで見かける印象のポピーですが、ロシアの製菓コーナーには、黒いケシの実が売られています。

赤いパッケージはケシの実フィリング、青はトヴォローク入り。旧ソ連時代から愛されてきた味はもちろん、どこか懐かしいレトロなデザインも魅力です。

【ジャム&ヴァレーニエを味わう!スロイカ】

以前ご紹介した、ロシアの果実の砂糖煮「ヴァレーニエ」を閉じ込めたのが、パイ生地のスロイカ(слойка)です。

☆関連記事:【モスクワ通信】ジャム<ヴァレーニエ<コンポート

△スロイカは、パイ生地にりんごやさくらんぼ、ブルーベリーなどのヴァレーニエを挟んで焼き上げます。
パン屋さんの焼き立てサクサクのものがベストですが、パッケージされた菓子パンのしっとりしたものもまた美味しい。地下鉄の入り口に並ぶキオスクでも定番で、温めてもらったスロイカを頬張りながら歩く人をよく見かけました。

ハムやチーズ入りのお惣菜系や、ソーセージ入りのサシスカ(сосиска)も人気です。

【しっとり大人の味:ババ・ラム】

△ババ・ラム(баба ромовая)は、コップ型のブリオッシュパンにラム酒シロップをたっぷり染み込ませた大人の味です。しっとりとした食感と芳醇な香りが広がり、まるで洋酒の香るケーキのよう。

【懐かしい子どものおやつ:コルジクとプリュシカ】

△コルジク(коржик)は、外はクッキーのようにサクッ、中はスコーンのようにふんわりの薄型パンです。アーモンドプードルを使ったミンダーリヌィ・コルジク(Миндальный коржик)も人気。

△プリュシカ(плюшка)は、ハート型やうずまき型の砂糖パン。どちらも学校の給食や子どものころのおやつ時間を思いだすロシア人も多いそう。

以前ご紹介した、蜂蜜とスパイスを練り込んだトゥーラ名物「プリャニク」も、パンとクッキーの中間のような食感で紅茶にピッタリです。

☆関連記事:

モスクワ通信『サモワールとプリャニキの街トゥーラ(1)ロシアのお茶文化を訪ねて』

【素朴な甘さが止まらない:ポンチク】

△揚げドーナツ系の菓子パン「ポンチク(пончик)」は、表面は軽くカリッと、中はもちもち。粉砂糖をかけただけのシンプルなものが多く、一口食べると、ふんわりと油と粉の香ばしさが広がり、心がほっと温まります。サンクトペテルブルクではピシュカ(пышка)とも呼ばれ、味・形も店や地域によってさまざまですが、いずれにしても揚げたての香りに誘われて、見つけるとついつい並んでしまいます。

【日本にも“シベリア”があった!?】

ところで、日本にも“ロシアの香り”を感じる菓子パンがあります。その名も「シベリア」。

「昭和のこどもたべたいお菓子No.1」に選ばれたというこのお菓子は、カステラに羊羹を挟んだ日本生まれの菓子パンです。

△お店自慢のシベリアを食べ比べるのも楽しい!京都・村岡総本舗のシベリア。

Screenshot

△青森・工藤パンのシベリア

△シベリアの種類の多さは日本一!いえ世界一⁉︎?と噂の、埼玉県岩槻・関根製菓

こし餡をカステラではさんだ「昔なつかしシベリア」以外にも、小倉、柚子、抹茶、黒糖、味噌、よもぎなど和菓子屋さんの自慢の味。さらに、モカ、ミルクコーヒー、キャラメル、マロン、いちご、オレンジ&マンゴー、ココアなどケーキ屋さん風のお味。また、春のさくらや青梅、夏のラムネや紫いもなど季節を感じる珍しい味まであります。

羊羹部分をシベリアの永久凍土に見立てた説、カステラに挟まれた羊羹をシベリア鉄道の線路に見立てた説、シベリア出兵や従軍した菓子職人が考案したという説まで――。なぜ“シベリア”と名付けられたのかは諸説あり謎に包まれています

ただし、ロシアで「シベリアをください」と注文しても出てきませんのでご注意を!

焼きたての香り、ほんのりとした甘み、そして紅茶の湯気。
ロシアの菓子パンには、その国の人々のやさしさと日々の物語が詰まっています。

「今日はどれにする?」――そんな小さな幸せの選択から、
あなたのロシア菓子パン図鑑が始まります。