冬を温めるロシアの一杯と、アブレピーハ

2026-01-28

ロシアの冬、恋しいものといえば——湯気のたつ熱々の紅茶です。長い冬の間、屋外で開催される年末年始のイベントやお祭りでは、紅茶や蜂蜜酒、そしてフルーツティーで体を温める人たちの姿をよく見かけます。紅茶のまわりには人が集まり、会話が生まれ、心も体も温めながら、長い冬を過ごしていきます。

△「さあ、お嬢さん、無料だよ。あったまっていきな」たっぷりとお湯をたたえ、もくもくと湯気の立つ大きなサモワール(ロシア式湯沸かし器)は、見ているだけであたたかそう!

ロシアには、「Самовар кипит — разговор не молчит(サモワールが沸いていれば、会話は止まらない)」という表現があります。冬の長いロシアでは、あたたかい飲み物を囲む時間が、人と人をつなぎます。

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△「紅茶に浸して食べると、最高なんだよ」紅茶のお供に欠かせないのが、スーシキと呼ばれるドーナツ型の乾パンのようなお菓子です。

△カリカリと硬い食感で、直径約3〜5cmのスーシキ、少し大きく、程よい硬さのバランキ、さらに大きく、パン感覚で食べられるブーブリク。また、プレーン味以外に、胡麻やケシの実のついたものや、ほんのり甘いバニラ味などもあります。

紐に通してサモワールに吊るしている光景もよく見かけますし、ベビーカーに乗った赤ちゃんが、歯固めがわりに手に持って舐めている姿に出会うこともあります。

△甘党のロシア人たち。前に並んでいたおじさんは、角砂糖を5つ紅茶に入れ、さらにひとつはかじりながら、もうひとつは口に含んで、紅茶でゆっくり溶かしながら、美味しそうに紅茶を飲んでいます。肌寒い空の下、かじかんだ指先でカップを持ち、ふうふうと息を吹きかけながら一口飲む。甘い紅茶が、身体の内側から、心も体もじんわりとあたためてくれます。日本では紅茶は大人の飲み物という印象がありますが、ロシアでは子どもたちも甘い紅茶が大好き。給食にも出る、日常の味です。

△紙コップの柄が、ロシアのグジェリ陶器の柄でした。

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△お店の店頭で、紅茶を出してくださることも。蜂蜜やヴァレーニエ(果物の形を残して煮込んだジャム)を試食して、気に入ったら、そのまま購入できます。

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△お祭りでは、蜂蜜を発酵させた蜂蜜酒(медовуха)の屋台もよく見かけます。寒さに寄り添ってくれるやさしい甘さは、日本の甘酒とどこか似ていますね。

△こちらのカウンターでは、夏の間に収穫し、大切に保存してきたハーブや果実を使った温かい飲み物がおすすめとのこと。

△ロシアの野草でつくる優しいお味のハーブティー”Иван чай(イワン・チャイ)“にお湯を注いでいた店員さんが、「アブレピーハを入れる?ビタミンたっぷり、風邪予防にもおすすめだよ!」と声をかけてくださり、持っていた棒で、実をとんとんとつぶして手渡してくれました。

ロシアで健康や美容に良いとされるアブレピーハ(облепиха)は、グミ科に属する果実で、日本ではサジーやシーバックソーンとも呼ばれています。

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△ビタミンCたっぷりのオレンジ色の実は、実がとても小さく、皮と種がしっかりしていて酸味が強いため、そのまま生で食べる果実というよりも、煮出したり、潰したり、甘みを加えたりとひと手間加えて、ジャムやモルス(ベリー類のジュース)してよく親しまれています。

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△「アブレピーハのお茶」は、乾燥した果実やフレーバーと紅茶の茶葉を合わせて香りを楽しむ、いわゆるフルーツティーとは少し趣が異なります。もちろん、そういう茶葉商品もたくさん売られていますが、ロシアでより一般的に好まれているのは、実をお湯に入れ、軽く潰したり煮出したりして、お好みで甘さを加えながら、果実を煎じる飲み方です。独特の香り、まろやかなこくと酸味が広がり、体の芯からぽかぽかになります。アナウンサーという仕事柄、喉や粘膜にいいのよと勧めてくれる友人もいました。

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△日本ではあまり見かけないこのフルーツですが、ロシアでは冷凍フルーツコーナーにもあり、自宅で気軽に煮出して、蜂蜜や生姜を合わせてフルーツティーが楽しめるほか、

△ヨーグルトドリンクなどのフレーバーに使われたり、夏も冬もロシア人が大好きなコップ型アイスのスタカンチクにもアブレピーハ味があったり、

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△可愛らしい実が、紙ナプキンなどの柄に描かれることもあります。

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△シベリア発のナチュラルコスメブランドでも、このアブレピーハのシャンプーやハンドクリームは定番人気商品!こちらのブランドは、シベリアの過酷な環境でも生き抜く植物の生命力に注目して商品を展開していますが、まさに、アブレピーハは寒冷地や乾燥地でもたくましく根を張り実をつけ、ビタミンC、E、β-カロテン、鉄分、オメガ脂肪酸などを含んで栄養価も高いため、近年はスーパーフードとしても注目されています。

△アブレピーハ味のマルメラード(果肉入りのゼリー状の保存菓子)や、

△アブレピーハ味のパスチラなど、ロシア土産にも。

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△モスクワ大学のなかの茶室『清露庵』では、ダーチャ(ロシアの菜園つき別荘)で穫れたアブレピーハの実、寒天とお砂糖で作ったお干菓子もいただきましたが、抹茶にもよく合いました。

灰色の空が続くロシアの冬。北国の短い夏をぎゅっと凝縮したようなアブレピーハの鮮やかなオレンジ色は、まるで“冬の太陽”のようで気持ちまで明るく元気になります。大寒を迎え、日本では寒中見舞いを出したり、寒仕込みをしたりする時期ですが、日本でもロシアでも、冬を温める一杯で元気に過ごしたいですね。

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【モスクワのスーパーマーケット探検】〜森の民ロシア人ときのこのある暮らし〜

2025-12-20

森の民とも言われるロシア人は、きのこが大好き。旬の季節になると、森へきのこ狩りに出かけ、採れたてを味わい、それから保存して、長い冬に備えます。きのこを使った美味しいロシア料理もたくさんあります。

日本のきのこ売り場の定番といえば、しいたけ、舞茸、しめじ、えのき茸、なめこ、エリンギでしょうか?

△ロシアのスーパーの生鮮食品コーナーでは、実はそれほど多くの種類のきのこは並びません。そのなかで圧倒的な存在感を放つのが、マッシュルーム。日本よりも大きく肉厚で、お値段も手頃です。生でスライスしてサラダに、ポタージュスープに、チーズをかけてグラタン風の料理ジュリエンに。お肉やスメタナ(サワークリーム)と合わせてビーフストロガノフにしたり、ピロシキの具にしたりと、まさに万能選手。以前は、中国市場やアジア食材店でしか見かけなかった日本お馴染みのきのこも、日本食ブームの影響で、モスクワの高級スーパーに『シイタケ』『エリンギ』『エノキ』と、日本語そのままの名前で並んでいたこともありました。

△充実しているのは、瓶詰めコーナー。ロシア人の友人はこう話します。「きのこはスーパーではほとんど買わないの。旬の時期に森でたくさん採って、あとはダーチャで瓶詰めにしておくのよ。食べたい時は、それを使うの。」(関連☆モスクワ通信『郊外の菜園付きの別荘ダーチャでくつろぐ初夏の一日』

△市場やお惣菜コーナーには、塩漬けきのこがずらり。つぎつぎに味見させてくれるので、お好みのきのこを量り売りで購入でき、ポルチーニ(Белые грибы)をはじめ、乳茸(Грузди)、ヌメリイグチ(Маслята)など種類も豊富です。「ウォッカには、これがなくちゃね。」隣に並んでいた男性が嬉しそうに教えてくれました。

△冷凍食品コーナーでは、なめこのようにぬめりのあるナラタケ(Опята)や、黄色が綺麗なアンズタケ(Лисички)など。

△きのこ味の加工食品も大人気。アンズタケ入りの塗るチーズや、

 

△きのこ&スメタナ(サワークリーム)味のポテトチップスは定番中の定番です。

△ロシアのきのこ料理で、私のおすすめは、きのこのグラタンЖюльен(ジュリエン)。日本でもおなじみのマギーのブイヨンですが、ロシアには「簡単ボルシチ」や「簡単ジュリエン」の素も売られています。

△軽くて日持ちのする乾燥きのこは、お土産としても人気。戻してパスタやスープに加えると旨味がぎゅっと広がります。なかでも一番人気は、ポルチーニ(Белые грибы)。おとぎ話に出てきそうな、まさにザ・きのこ!の形ですね。

△こちらはチャーガ(手前)。以前ご紹介しましたが、民間療法ではロシアでも日本でも、さまざまな効用が語られてきました。主に白樺に寄生するきのこで、かつては白樺の栄養分を奪う“白樺の癌”と恐れられていましたが、研究が進むにつれ「幻のきのこ」と呼ばれるようになりました。

細かく砕いて煮出して飲むほか、最近ではお洒落パッケージのチャーガ茶としてお土産にも人気。癖がなく飲みやすいのも特徴です。(関連☆【モスクワ通信】新型コロナウイルスで再注目!チャーガ茶で免疫力アップ!?

ほかにも、採れたてでなければ食べられず、お店では出会えないベニタケ属のきのこ(Сыроежка)などもあります。まずは、きのこの「かさ」ではなく、「あし」の裏をみて、虫がついていないか確認するのがポイントなのだそう。「小さな頃からママに教わって、森で採っていたから、きのこのことなら任せて!」そう誇らしげに語る友人たちと、きのこシーズンになったら、カゴを手に森へきのこ狩りに出かけたいものです。

△ところで、ロシアではきのこはモチーフとしても大人気。ケーキの飾りにもきのこをよく見かけますし、

△ハリネズミときのこの組み合わせも。

△日本ではあまりないセンスですが、お皿の柄としてきのこが描かれていたり、

△マトリョーシカや民芸品にもきのこ型やきのこ柄を見かけます。

△今の季節なら、クリスマスツリーのオーナメントにも。

△そしてこちらは、日本の子どもたちに愛され続ける、あのきのこ菓子のロシア版⁉︎ 黒と白、2色のきのこが楽しめます。

【モスクワのスーパーマーケット探検】 〜日本と違うロシアの野菜売り場編〜

2025-11-20

日本ではほかほかのお鍋に入れる冬野菜や、クリスマスに向けたカラフルなサラダが店頭を彩る季節になりました。それでは今日は、モスクワのスーパーマーケットの青果コーナーを覗いてみましょう。

△キロ単位の大きな袋で売られているじゃがいも(Картофель)をはじめ、人参(Морковь)、玉ねぎ(Лук)、ニンニク(Чеснок)、生姜(Имбирь)、ブロッコリ(Капуста брокколи)、カリフラワー(Цветная капуста)、アスパラ(Спаржа)、セロリ(Сельдерей)、アボカド(Авокадо)、インゲン(Фасоль)、サヤインゲン(Горошек сладкий)、とうもろこし(Кукуруза)など日本でもお馴染みの野菜がずらりと並びます。

△こちらはウズベキスタン産のトマト(Помидор)。太陽の恵みをたっぷり浴びたウズベキスタンの野菜は、味が濃く、とっても美味しいのが特徴です。枝付きのものも多く、赤やオレンジ、黄色などカラフルなヴァリエーションも楽しめます。

△キュウリ(Огурец)は日本よりも小ぶりで太め。Бакинскийなど表面がつるりとしたタイプも人気です。関連☆モスクワ通信『黄金の輪スーズダリの国際キュウリ祭り』

△葉物野菜(салат)は、苗から育てたものをそのまま販売するスタイルも人気!ハーブの種類も豊富で、雪に閉ざされた長い冬の間には、たっぷりの新鮮ハーブでビタミン補給するロシア人も多いです。ロシア料理に欠かせないディル(Укроп)をはじめ、イタリアンパセリ(Петрушка)、パクチー(Кинза)、ミント(Мята )、レタス(айсберг)、バジル(Базилик)、ルッコラ(Руккола) 、ケール(Кейл)などが並びます。

△日本ではあまり見かけない野菜では、酸味のあるスープに入れると美味しいスイバ(Щавель)や、昔ながらの緑色の炭酸飲料にも使われるエストラゴン(Эстрагон またはтархун)、コールラビ(Кольраби)、アーティチョーク(Артишоки)やフェンネル(Фенхель)、西洋わさび(Хрен)、ラディッキオ(Радичио)、ロマノ(Романо)、コルン(Корн)なども見かけました。関連☆【モスクワ通信】寒い国だからこそ美味しい!ロシアで味わっていただきたいスープ

△日本でもジャガイモ&人参&玉ねぎの「カレー用野菜セット」を見かけますが、ロシアの高級スーパーでは当時流行していたトムヤムクン・ミックス、ロシアの夏定番スープのオクローシカ・ミックスなども売られていました。(関連☆ )

△洗わずそのまま食べられるサラダ用ミックスリーフ(Салатная смесь)には、なんと水菜入りのものも。ロシア語でも「ミズナ(мизуна)」と書かれているので、日本食の影響を感じます。

△日本が恋しくなる野菜といえば、キャベツ。春先には柔らかな緑のキャベツ(Капуста)も出回りますが、普段は白くずっしりと硬いものが主流です。茹でてスープにすると美味しいのですが、千切りなど生食にはお勧めできません。ちなみに、白菜は「中国のキャベツ (Капуста Китайская)」と呼ばれています。

△太ネギや大根(こちらも、ロシア語でもダイコン(Дайкон))も、見かけることはありますが、やや小ぶり。一方、細ネギ(Лук зелённый)やハツカダイコン(Редис)は、比較的いつでも手に入ります。

△ナス(Баклажан)やピーマン(Перец)は、日本とは対照的に大ぶりなものが主流。緑、赤、黄色、オレンジと、どれもパプリカサイズです。大きなズッキーニのようなカバチョク(Кабачок )も、定番野菜のひとつ。

△ロシアのスーパーに欠かせないのが、ボルシチやサラダに使われるビーツ(Свёкла)。生のものも、茹でたものも並んでいます。ホウレンソウ科の植物なので、実は茎もとても美味しいんです。日本のような立派なホウレンソウが少ないロシアでは、ビーツの茎をホウレンソウ代わりに調理することもありました。食卓が鮮やかに!関連☆モスクワ通信『ロシアで味わいたい!ビーツいろいろ』

△甘くてホクホクの南瓜やさつまいもは、残念ながら一般的なロシアのスーパーではほとんど見かけません。。

△日本でお馴染みの栗や南瓜、さつまいも、他にもニラ、青梗菜、かぶ、ゴーヤ、山芋、レンコン、紫蘇、もやし、オクラなどは、中国市場やベトナム市場、また一部のスーパーで購入することができます。新鮮な野菜を求めて、地元の市場へ足を運ぶ人も多いようです。(関連☆【モスクワ通信】あなたはどっち派!?昔ながらの市場から食のテーマパークへ

なお、今回の写真は、品揃えに定評のあるスーパーで撮影したもの。日本のようにいつでも新鮮な食材が揃っているわけではないロシアの普段使いのスーパーでは、季節や日によって、並ぶ野菜の種類や品質がぐっと落ちることもあります。そのため「レシピを考えてから買い物へ」ではなく、「今日はどんな野菜があるかしら?どの野菜が新鮮かしら?」と、スーパーを歩きながら献立を考えるのが日常でした。

そうそう、ロシアに来たばかりの頃、野菜売り場を見て息子が一言。「ロシアなのに“大きなかぶ”はないんだね」……確かに!絵本で見ていたような大きなかぶは、どこを探しても、見当たりませんでした。