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・『ロシア文化フェスティバルblog』連載中

・著書『ロシアの文化と芸術 (ロシアのラジオ案内)』(生活ジャーナル社)

 

【モスクワ通信】120年の歴史に幕・・・食料品店エリセーエフスキー

2021-05-30

ロシア文化フェスティバルblogより)

2021年4月、ロシアの観光名所のひとつとしても人気のあるモスクワの食料品店エリセーエフスキー(Елисеевский)が、その長い歴史に幕を閉じることになったという衝撃的なニュースが流れました。帝政ロシア時代にタイムスリップしたかのような豪華絢爛な店内に初めて足を踏み入れたときの衝撃は、今も忘れられません。

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△モスクワの中心クレムリンから続くトヴェルスカヤ通りに面する一等地に店を構えていました。この建物は18世紀末に建築家マトヴェイ・カザコフ(Матвей Казаков)によってエカテリーナ・コズィツカヤ(Екатерина Козицкая)の邸宅として設計されました(トヴェルスカヤ大通りとコズィツキー横町の角に建っています)。クラシックな街並みに馴染んで目立つ看板がないため外観からは少し入口が分かりにくいのですが、中央の扉を押して建物内に入り、右手側が食料品店エリセーエフスキー、左手側がソ連の雰囲気を味わえるファミリーレストランのВареничная №1 (ヴァレニチナヤ No.1)になっています。

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△邸宅はその後、ジナイダ・ヴォルコンスカヤ(Зинаида Волконская)の芸術サロンとなり、なんとあの詩人プーシキンやチュッチェフ、文豪ツルゲーネフなどもここを訪れていたのだとか・・・!たくさんの文化人が集い、前菜をつまみながらお酒を酌み交わし、優雅に音楽にあわせて踊ったり詩の朗読を楽しんだりしたのかもしれません。1901年に食料品店が開業してからも、“詩人マヤコフスキーがここでサラミを買った”なんていうエピソードもたくさん残されていて、想像するだけでワクワクしてきます。

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△中央の扉をくぐって建物内へ

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△食料品店の入口にはお店の創始者でオーナーだった大富豪グリゴリー・エリセーエフ(Григорий Григорьевич Елисеев)の胸像が飾られています。1864年サンクトペテルブルクの裕福な商人の家に生まれたグリゴリーは、外国でワイン醸造について学んだ後にロシアに戻り、祖父のピョートルが1813年にサンクトペテルブルクで開いた小さなお店から始まった家業を継ぎます。その後「エリセーエフ兄弟商会」が設立され、事業がさらに拡大していきました。1898年にモスクワの現在の建物がある場所を購入し、改築して1901年にエリセーエフの名を冠したブランドストアである高級食料品店をオープンしました。

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△グリゴリーと最初の妻マリヤは、息子7人と娘1人に恵まれました。3男のセルゲイ・エリセーエフ(Сергей Григорьевич Елисеев)は日本研究者・東洋学者として知られており、当時の東京帝国大学留学中には夏目漱石を師と仰いでいたそうです。1914年に妻マリヤを失った後、19歳年下の2人目の妻ヴェラと再婚。1920年にパリへ亡命し、そこで生涯を終えました。

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△では、いよいよ店内へ。葡萄の房ように垂れ下がる見事なクリスタルのシャンデリア、ステンドグラスに優美な柱・・・重厚でゴージャスな内装は息を飲むような美しさで目に入るものすべてに圧倒されてしまいます。創業当時から変わらぬ雰囲気なのだそう・・・!

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△宮殿のような店内と不思議なコントラストを醸し出しながら、野菜&果物コーナー、精肉や魚類コーナー、冷凍食品やお惣菜・・・とエリアごとに食料品が並びます。

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△ソ連時代には国営となりГастроном № 1(ガストロノム No.1 )と店名が変更されたこともありましたが、食糧難の時代にもずっと変わらぬ姿で営業を続け、モスクワ市民の憧れの高級食料品店としての地位を誇ってきました。当時ロシアでは珍しかったオリーブオイルやフランスのトリュフ、新鮮な牡蠣やエキゾチックなフルーツ、世界中から集められた豊富な種類のコーヒーや紅茶、サフランやシナモン、ナツメグなどのスパイス類などがいち早く紹介され、ブームの火付け役としてここから人気が広がっていった食品も多いのだそうです。新生ロシアになり、お店は再びエリセーエフスキーの名前を取り戻し、2004年の大規模なリニューアルによってグリゴリー・エリセーエフのスケッチなど貴重な資料をもとに美しく復元されました。

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△場所柄いつも観光客でいっぱいで、帝政時代にタイムスリップした気分で店内を見学してから、パッケージが美しいチョコレートや紅茶など記念にお土産を購入するツアーも多いようです。ずらりと並ぶ美しい野菜や果物、お肉、冷凍食品などロシアの台所事情を覗けるのは楽しいですし、気になるお惣菜をあれこれ購入して試してみることもできます。初めてのロシア旅行の際に、本で読んでからずっと興味を持っていたロシア料理“煮こごり”や“毛皮を着たニシンのサラダ”に出逢い感動したことを思い出します。

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△ワイン売り場へ向かう入り口の上にも、エリセーエフの肖像画が飾られていました。もともとはシェレメチェフ伯爵の農奴で庭師だった祖父のピョートル・エリセーエフスキーは、クリスマスの夜に新鮮なラズベリーを届け、その心遣いに感謝した伯爵から自由を与えられて、商人としての第一歩を踏み出しました。食のサプライズで人を喜ばせたいという想いはピョートルから子孫へ、かつて見たことのないような食料品店を作りたいと考えていたグリゴリーに、そして現在まで受け継がれています。

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△通路の壁面はミニギャラリーになっていて、貴重な写真や絵画でお店の歴史の一部を知ることができます。

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△こちらがワイン売り場です。Eliseev’s Store and Cellars of Russian and ForeignWines( Магазин Елисеева и погреба русских и иностранных вин)として創業時からロシア国内外のワインを扱っていたエリセーエフスキーだけに、ワインやアルコール類がずらり。

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△エリセーエフはディスプレイにもこだわりを持っていたと言われています。

エリセーエフ兄弟商会は、1903年にはサンクトペテルブルクのネフスキー大通りにも店を開き、エリセーエフの食料品店は唯一無二の存在感でロシア二大都市に君臨してきました。モスクワ店の改装も手掛けた建築家ガヴリエル・バラノフスキー (Гавриил Васильевич Барановский)が建てたサンクトペテルブルク店は、アール・ヌーヴォー様式(モデルン様式)の美しい建物で、20世紀の主要な価値を象徴する「産業」「貿易」「芸術」「科学」の彫刻で彩られています。2012年には、100年以上前の貴重な写真やスケッチをもとに建物内を詳細を再現して、洗練されたレストランやお店、2階には劇場も備えたフードホールとして再オープンを果たしました。

エリセーエフの店の名前は、ロシアを代表する名作のなかにも見ることができます。たとえば、トルストイの『アンナ・カレーニナ』には「(中巻21章)新しい牡蠣の入荷したエリセーエフの店からたった今やってきたオブロンスキーは・・・」(新潮文庫 木村浩訳)という場面があり、食通のオブロンスキーを描写しています。また、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』のなかでも「(1巻 第1部 第2編 8章)ファクトリーのワインにエリセーエフ兄弟商会の蜂蜜酒ですか、こりゃたいしたもんだ、神父さん!・・・」(光文社 亀山郁夫訳)というように、ステータスの証としてこの食料品店の名前が登場しています。

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△モスクワの店舗の前の石畳に埋め込まれたマーク

2021年4月、モスクワ店の突然の閉店が報じられてから、どんなときも豊かに潤っていた店内の棚からあっという間に商品が消えてしまい、がらんとした店内にはその美しい姿を永遠の記憶に留めようとカメラを手に訪れる人が後を立ちませんでした。惜しまれつつその扉を閉じた食料品店エリセエフスキーは現在モスクワ市によって歴史的建築物として保存されていますが、この場所が再び息を吹き返したくさんの美味しい食料品で満たされる日は来るのでしょうか・・・!

 

«Елисеевский»(モスクワ) Address: Tverskaya St, 14, Moscow

 «Магазин купцов Елисеевых»(サンクトペテルブルク) Address: Nevskiy pr, 56, Saint Petersburg

 

参考文献

«Магазин купцов Елисеевых» https://www.kupetzeliseevs.ru/

Елисеевский магазин – место, где живет дух старой Москвы

【今日のロシア】『三遊亭楽麻呂さんオンライン独演会』ナレーション担当します!

2021-05-26

いよいよ今週土曜日!ロシア公演も大盛況だった日本一“ロシア通”な落語家、三遊亭楽麻呂さんのオンライン独演会!
 
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#NHKラジオ #ロシア語講座 #まいにちロシア語 にもご出演されていた #三遊亭楽麻呂 さんのファン待望の #オンライン独演会です。#生配信 では観客と双方向でつながれる「#謎かけ」にも挑戦!インターネットがあれば世界中でお楽しみいただけます。新しい落語の楽しみ方で、豊かなステイホームをあなたに・・・!
 
5月29日(土)18:00-19:15(JST) 2,400円 + チケット手数料
(アーカイブ配信は6月6日(日) まで1週間お楽しみいただけます)
 
楽麻呂さんは、2009年、2010年にロシア・モスクワ公演で大成功、当時私も「ロシアの声」の取材で会場に足を運びました。2018年には「ロシアにおける日本年」の認定公演としてウラジオストク 、ユジノサハリンスク、ハバロフスク公演も。そしてパンデミックから約一年が経過した今、日本とロシア、世界のファンにむけて待望のオンライン独演会が実現!Go Toイベント対象公演にもなっています。
 
会場はNHK World Japanで「#ひな祭り」をテーマにした番組でも登場した #重要文化財#料亭#二木屋」です。美人女将はなんとモスクワで働いていらしたこともあるロシアともゆかりの深い方なんですよ。
 
♪ナレーション担当します。29日にお会いしましょう!
 
関連ブログ

【ロンドンの街角】 イギリス外務省とロシアの外務省

2021-05-19

St. James’s Parkから見えたイギリス外務省。(☆【英国のなかのロシア】ロシアから贈られたペリカン!水鳥たちの楽園 St. James’s Park

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△クライヴ像(The Lord Clive, Robert Clive)英領インドの基礎を築いたイギリスの軍人、政治家。

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△公園の周りには、美しい迎賓館も並んでいます。(ロシアの迎賓館についてはこちら☆【ロシアのなかの日本】旧モロゾフ邸(ロシア政府迎賓館)

さて、こちらはモスクワにあるロシア外務省。セブン・シスターズと呼ばれるスターリン建築で有名な建物のひとつです。

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△一部分修復中なので、白い石造りの建物はまるで頭に白いヴェールをかぶっているよう

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△2019年、外務省と大通りを挟んで向かい合うように新しい銅像が設置されました。外務大臣としても手腕を振るったエヴゲニー・プリマコフ(Евгений Максимович Примаков)像です。ノヴォジェヴィチ墓地ではお墓も見ることができます。(☆【モスクワの墓地】まるで彫刻の森美術館!著名人の眠るノヴォデヴィチ墓地

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△ちょうどその時、横にある建物から結婚式を終えたばかりの白いヴェール姿の新婚さんとお祝いに集まったご家族やご友人のグループが出てきました。

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幸せをいっぱいに振りまきながら、スターリン建築前へ。白いヴェールをかぶった建物と白いヴェール姿の花嫁さん。

ロシアでは結婚の記念日にウェディングドレス姿で市内をまわり、景色の美しい場所で記念撮影をするのが慣わしになっています。この時期、美しいウェディングドレス姿や新婚さんを乗せた大きなリムジンをよく見かけます。(☆【モスクワの街角】幸せのおすそわけ!モスクワ市内をまわるウェディング黄金の秋は結婚式シーズン!

ロンドンでも赤い2階建バスをウェディング仕様にして記念撮影をする新婚さんを見かけました。(ロンドンといえば、真っ赤なダブルデッカー!英国とロシアのバス事情