【ロシアナの本棚】不思議の国ルイス・キャロルのロシア旅行記

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『不思議の国のアリス』(ロシア語:Алиса в Стране чудес )は、絵本で、童話で、そしてディズニーアニメや映画でも、世界中で親しまれてきた1冊です。では、その著者ルイス・キャロルが、『不思議の国のアリス』を出版した約1年半後の1867年にロシアを旅していたことはほとんど知られていないのではないでしょうか・・・!

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『不思議の国ルイス・キャロルのロシア旅行記』(笠井勝子・訳 開文社出版)

イギリスから出たことのなかったルイス・キャロルにとって、35歳で初めてパスポートをとり初めて旅することになった外国が、そして結果として生涯最初で最後の海外旅行になった場所がロシアだったなんて!まさに不思議の国のキャロル、というところでしょうか。

ロシア正教大主教に面会する友人のお供で旅したので、教会や聖堂や修道院も訪れ、宮殿や美術館なども観光も楽しみ、田舎では農家のなかを覗いたり、結婚式や祭りなどもみて、その様子を日記形式の旅行記にまとめています。さまざまな出会いもあり、なかでもペテルブルクでは日露和親条約を結んだプチャーチンにエルミタージュ美術館を案内してもらっています。

7月12日に出発し、ロンドン〜ドーバー〜ブリュッセル〜ケルン〜ベルリン(シャーロッテンブルグ、ポツダム、ダンツィッヒ、ケーニヒスベルク〜列車で28時間30分かけて7月27日にサンクト・ペテルブルク へ到着。ロンドンと比べて通りの広さに驚き、イサク聖堂やカザン聖堂、ネフスキー大通り、ピョートル大帝像、エルミタージュ、アレクサンドル・ネフスキー修道院など、地図を購入して町を歩き回り、辞書を買って馬車の御者とロシア語で交渉したり、時にはイラストも交えて綴っています。

8月2日に寝台列車でモスクワへ、翌朝10時到着。雀ヶ丘からモスクワ 川の流れる美しい町を一望し、ナポレオンがこの丘から初めてモスクワを目にした時のことに思いを馳せます。

ニジニ・ノヴゴロドやセルギエフ・ポサード、新エルサレムへも足を伸ばし、伝統的なキャベツ・スープのシチーやピロシキ、カツレツなど味わったメニューも細かく記載して感想を記したり、ナナカマドの実で作るビターワインなど珍しいものを試してみたり、ロシアのアイスクリームの美味しさに舌鼓をうったり!

その後、再びペテルブルク〜ワルシャワ〜ブレスロー、ドレスデン、ライプツィヒ、ギーセン、エムズ、ビンゲン〜パリ〜カレー〜ドーバー・・・そして9月14日未明に懐かしのイギリスに戻ります。旅行の数年後には、ロシア語の数遊びを題材に作った詩も残しています。

少女時代から大好きだった『不思議の国のアリス』&『鏡の国のアリス』。好奇心いっぱいのアリスを自分と重ねてまだ見ぬ広い世界と想像の世界との間を彷徨っていました。そして、自らもまたキャロルのように不思議いっぱいのロシアを訪れ、“不思議の国のユリ”になるなんて。運命を感じる特別な1冊です。

 

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